さくらんぼのタルト、モンブラン、チェリーパイ、チョコレートとくるみのショートケーキ、色とりどりのマカロン、チーズケーキ、さつまいものシナモンロール、バナナのシフォンケーキ、フロランタン、いちごのミルフィーユ、生クリームのロールケーキ。

…これ全部食べるつもり?
そう。全部食べたいの。


甘いものに囲まれてるだけであたしは生きていけるの。しあわせになれるの。だから早く、買ってきて。


僕は彼女が食べたいと言ったものすべてを買ってきた。彼女の部屋のドアを開けると、彼女は体操座りをして空を見ていた。そうして、僕が来るのを待っていたのだ。
もう付き合いきれない、と彼女に伝えた。彼女は、そう、とだけ言葉にして、片っ端から包みを開けて、フォークもスプーンも使わずがむしゃらに食べ始めた。ぐちゃ。ケーキが彼女の握力に耐えられずに潰れながら彼女の口に入ってゆく。耳障りな音だ。
僕はその姿をただ見つめた。その姿はとても、とても幸せそうに見えた。だから僕は部屋を出て、そっとドアを閉めた。











(2010.03.20)
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