「はあー…。」

疲れたー!そう叫び公園の芝生に大の字に寝転がった豚みたいな女はやっぱり,あの日俺に告白をしてきたデブスで間違いが無いのであろう。しかしながら,昨日といい今日といい…たまたま登下校にここを通るから発見したもののジョギングやストレッチをこなして一体何がやりたいのだろうか。…まさか,ダイエット?あの豚みたいな女が?まさか,ないないと一人首を振るがやはり考えた先にはダイエットしかない。しかしながら何故俺があんな女ごときに目が惹かれているというのだ。なんでわざわざ電柱の影に隠れてまであいつのことを見ているのだ。全くの怪奇的行動に自身のことながら身震いさえし始めた。

「ないわー…俺,ないわー…。」

暗示をかけるようにそう呟きそっとその場を離れようとしたところでふと誰かに名前を呼ばれているような気がして振り返ってみたが,俺に用があるような奴はいない。そもそも人通りが少ないここの道にはやはり人一人いやしなかった。

空耳か。

そう思い込み少しながら怖くなり足を早めたところまたもや誰かに名前を呼ばれているような感覚に陥った。

空耳…じゃないよな。

寒気がしてもう一度振り向いたが人の気配はない。怖くなって駆け出したところ今度ははっきりと聞こえてきた。

「黄瀬ええー!滅びろー!」

…う,うわあ…。無我夢中で家までの道のりを走っていたが。その時の記憶はまるまる吹き飛んでしまっていて思い出そうにも思い出せないでいる。

―――

「黄瀬ええー!爆ぜろー!」

どす,鈍く小さな音が響いた。グローブをはめているため手のひらで汗が拭えないから腕で額に流れる汗を拭う。木に巻きつけられた布製のクッションは昨日リコさんが付けてくれたものだ。ここの公園なら人通りも少ないからいくらでも叫べるわよ,そう言われて妙に叫びたくなり,パンチと共に憎き相手黄瀬君の名前にプラスアルファな嫌味を込めて叫んでいたわけだが。

「でも…本人がこの近く通ったら流石にやばいかなー…。」

まあ,いっか,どうせ通らないだろうし。そう一人納得して木に向かいしょぼくれたパンチを決めていく。見てろ黄瀬君のヤロー。絶対痩せてやるからなー。




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