fiction | ナノ
「菅原君。」
「ん,何?」
「私にこれをその…食べろと?」
「うん。美味しいよ。」

私の向かいに座る菅原君が,食べて食べてと言いながらにこにこと笑っている。私の目の前には麻婆豆腐…真っ赤な麻婆豆腐が置かれていて,刺激的な赤は目に悪い。てか,本当に目がピリピリと痛んできた。どんだけ唐辛子入れたの馬鹿。

「私が辛いの苦手だって知ってるよね。」
「うん…いや,知らない。」
「今うんって言った!」

私の言葉さえも聞き逃してまだ食べろとしつこい菅原君に押され負け,渋々と赤に埋もれた豆腐を箸で掴みあげ口まで運んだはいいが。

「なんかこれ,目にしみてくる…。」
「気のせいだって!」

そう言いながら笑う彼を睨みながら豆腐を頬張るが撃沈。何これ辛すぎるわ死ぬわ。辛すぎて声も出せない状態まで陥った私は,右手を伸ばして水をくれ,ヘルプのポーズをとったものの「そんなに喜ぶ程美味しかったんだ,俺嬉しいな」と受け流されてしまった。私が死んでもいいのか,この腹黒天使菅原君。

数分後,まだヒリヒリと喉が痛むものの先程までの激痛はおさまった。ほっと一息をついたがお皿の中にはまだ何口分もある麻婆豆腐。目の前に居る彼も残すことについては許してくれそうにない。仕方なく一口分箸で掴み食べるが,これは駄目だ。私死ぬパターンだ。床の上で転がる私を見て菅原君が楽しそうに笑った。この悪魔め。

「名前。」
「何ですか…菅原様。」
「それ完食できたらお口直しのもの出してあげるから。」
「まじですか,食べる!」

お口直しのものとはケーキか何かかな?お口直しを脳内で甘いものに変換した私は俄然やる気がみなぎってきて,辛さも我慢し箸を勧めた。10口目以上になってくると流石に口の中で辛さが慣れてしまったのかあまり痛みは感じないようになった。

「ふー,御馳走様でした。お口直し持って来い。」
「お疲れー。はいはい。」

私がそう言ってもただ笑うだけで,台所にあるであろう甘いものを取りに行く素振りを見せない彼を不思議に思い,「菅原君ー?」と呼んだところ急に彼の顔が目の前に迫ってきた。

「ちょっと,何する…!んっ!」

軽いリップ音を立てて離れた彼の唇から目が離せず,火照る頬と体と開けたまま閉じれない口。「はい,お口直し完了」そう菅原君が言い放ち,ますます体が熱くなってきた。

「す,菅原君の馬鹿!ただ単にそれがやりたくて私にあんな激辛麻婆豆腐食べさせたの?!」
「うん,それもあるけど名前が我慢しながら苦しんで食べてる様子を見たかったからっていうのもあるかな。」
「菅原君の馬鹿ー!」

2013.01.24
( ◎お口直しの甘いもの HQ/菅原孝支 )
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