fiction | ナノ
◎報われない 同性愛表現注意

赤司君のことが好きです。無理にとは言いませんがお返事もらえたら嬉しいです。3年2組 苗字名前

ばらばらになった紙切れをくっつけて,そこに刻まれた文章を読んだ。止め用にも止められない,自然と頬をつたう涙とその紙に羞恥と敗北感を覚えてただただ泣き続けることしかできなかった。

∞ ∞ ∞

今日の朝,いつもなら遅刻ぎりぎりに来る私だが1時間も早く起きて家を出発し,着いた時刻は7時50分で学校に居る生徒も朝練目的の人ばかりだった。私は一人赤司君の下駄箱を探し出し,誰かに見られていないかと周りを見渡してからそっと奥に手紙,所謂ラブレターを入れた。

どうせ断られる,そんなことわかりきったことだが,断られると分かっていても彼と対面で,しかも彼は私のラブレターを見てどうしようかと私のことについて悩んでくれるという行為だけで嬉しく感じてしまうほど,私は彼のことが好きだった。

早くも今日の放課後彼に呼び出されて裏庭に着いたはいいが,肝心の彼の姿は見当たらない。そわそわとする私に彼のものではない,声がかかった。

「どんな子かと思えば…あんたみたいな顔の人が?赤司っちのことを?」
「え…。」

赤司君の声…じゃない。後ろから聞こえてきた声に振り返れば,誰でも知っているであろう黄瀬涼太君が私のことを蔑むように見下していた。私は彼の,赤司君の下駄箱に手紙を入れたはずなのに,どうして黄瀬君が来たのかと疑問に思い彼を見つめていると,「あ,どうしてって顔してるー」と言いながら黄瀬君がげらげらと笑い出した。

「赤司っちに頼まれてここに来た。」
「…嘘だ。」
「おお,怖いっスねー。正解。簡潔に言えば,あんたの書いたラブレターは赤司っちの手には渡らなかったんスよ。ついでに言えば,あんたを呼び出したのも俺。机の中に裏庭来てって書かれた紙切れが入ってても本人って勝手に決めつけちゃ駄目っスよー?」

おわかり?そう言いながら私を見下す彼を睨む。どうやって彼の下駄箱に入ったラブレターを盗み出したかは知らないが,いくらイケメンであろうとそんなことをする彼が許せない。たまらなく,憎い。

「これっスよね。」

ひらひらと私が書いたラブレターを右手でつまみはためかせニヒルな笑みを浮かべる彼に「返して」と一言言い放った。

「返してどうすんの?」
「今度は本人に渡しに行きます。この際口頭でもいいです。」
「ふーん。」

彼がそう言ってから数秒,私の頬の横すれすれに何かが通った。鋭い風を切る音がきこえ,一瞬何が起こったかわからなかったが瞬時にして現実に引き戻される。今…黄瀬君…拳を振り上げた…?

「残念っスけど,赤司っちは俺らのもの。ってか,おれのものなんスよね?だから…。」

とっとと失せろ糞女,彼から発された言葉に目を見開く私。

「あ,次赤司っちに近づこうなんてことがあったら…その顔人前で歩けないようにしてあげるから。」

そう言い笑う彼に寒気が走る。けれど,ここで引き下がったらこの恋が叶うことはおろか,赤司君と話すことさえできなくなるかもしれないんだ。

「…あんたの。」
「…ん?」
「あんたの恋なんて,叶うわけないでしょ!」

そう言い切る私を見つめ,黄瀬君がふわりと笑った。

「わかんないっスよ。そんなこと。」
「わかるよ。わかりきったことだよ…。」
「まあ,でも,少しでも確率が上がるように,あんたみたいな邪魔なブスたちを蹴散らしてるんスけどね。」

ぞくりとまたもや鳥肌が立ち,清々しい笑顔でそう言い放った彼に言い返す言葉さえも失ってしまった。固まる私を見て高笑いをあげながらビリビリとラブレターを破いていく彼。止めることもできずただ呆然と見つめる私に見せつけるように,彼の手に残った最後の紙切れを勢い良く音を立てて,破った。

つたう涙を見ながら黄瀬君が笑う。

「あんたの恋も,叶わないよ。」

…あんたの,せいでね。

2013.01.24
( ◎最強最凶最恐の彼 krk/黄瀬涼太 )
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