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ARBEITER

◎下ネタ

今日は客が来ているということもあり真面目にレジと向き合って仕事している,とは違うかもしれないが,レジに向き合って先程から店の中でせわしなく頭を動かして何かを探していると見れる女性をぼーっとしながら眺めていた。

「す,すみません。」
「…。」
「すみません!」
「は,はい?」

ぼーっとしすぎたせいで気付かなかったが目の前には先程私が見つめていたばかりの女性が少し緊張気味に顔を赤らめ俯いている。

「どうしましたか?」
「えっと…。」

もじもじと体を揺らす女性に何か言い難いことかなと考え思考がぱたりと止む。…エロ本関係かな?

「こ…!コンドーム一緒に,探してほしいんです!」
「…か,畏まりました。」

彼女のはいた言葉に唖然としたものの今は勤務中で彼女は客,私は店員だ。瞬時に口角を上げて笑顔を作ったものの私はちゃんと笑えていただろうか。しかしこの時間帯は混んでくる時間であり客の足取りもいつもより早くこのコンビニに向かってきている感じがするのは気のせいだろうか。私が言いたいのはこんなに客がいる中コンドームを持ち上げ「はいどうぞ」なんて彼女に渡すことがどれだけ羞恥プレイかわかるかってことだ。

…と,視界の隅に赤い髪の毛が映った。ナイスタイミング,心中小さく拳を握り赤司君ー,と彼に念を送り,運が良かったのかそれとも本当に念が届いたのか,赤司くんがこちらに振り返った。「助けて!」目だけでそう訴えるとそれがわかったように赤司くんが私と女性客の方へ小走りで近付いてきた。

「こちらになります。」
「え…あ,はい…。」

案内してくれるのが私ではない,男性客だということに戸惑ったのであろう女性は少し声を上ずらせ返答をしていた。赤司君の方を見ると恥ずかし気も感じ取れない真顔ですたすたとコンドームが置いてある棚まで歩いていく。…私たちの会話聞いてたのかな。

「どうぞ。」
「…有難うございます。」

どこかホッとした様子の女性がレジへとコンドームを持ってきて,私はなるべく触らないようにと袋入れの際もレジ打ちの際も親指と人差し指の部分でつまむように持ったら赤司君に右足を踏まれてしまった。

「ありがとーございやしたー。」

女性客が小走りにコンビニから出ていく姿を見送り,何故だかたった5分程度のことなのに2時間働いた気分になりため息をつきながら項垂れる。あ,そういえば。そう思い隣で煙草を並べる作業中の赤司君に気になっていたことをきこうと声をかけた。

「随分恥ずかし気もない手馴れた案内だったけど…何回かお客さんに案内しかことがあったり?」
「いや,初めてだ。」
「…え!なんであんなに余裕そうに触れるの?」
「名前だって普通にエロ本触ってるだろうが。」
「あれは別。」

赤司くんがため息を零しゆっくりと顔を上げてこちらを見つめた。

「経験が豊富だからかな。」
「…え,なんの!?」

私の質問への返答は返ってこないまま,赤司君はどこか機嫌よく作業を進めていく。不貞腐れまた項垂れる私の背中を「仕事中です」と黒子君が叩いた。

「…痛い…。」

2013.02.02
( ◎アルバイター奮闘記 krk/赤司征十郎 )
私自身コンビニでのバイト経験は浅いです。
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