fiction | ナノ
◎ディープキス表現あり

「苗字さん。」
「何?影山君。」
「これ,提出よろしく。さっき渡しそびれてて。」
「ああ,わかった。」

彼から歴史のレポート用紙を引き取り背を向ける。…影山君,か。小さく息を吐いて止めていた足を動かし廊下を進んでいった。

∞ ∞ ∞

「…名前,舌,入れるぞ。」
「…うん。」

にゅるり,音にあらわせばそんな音。簡単に私の口の中に入れられた彼の舌は私の口内をぐちゃぐちゃにかき混ぜ侵食していく。くらくらする頭,くらくらする体。力が入らなくて立っているのもやっとの私は飛雄の肩に腕を伸ばし強い力で掴む。

「…くっ…。」
「ん…。」

私たちの行為は,静,という文字がよく似合っていた。時々どちらからか発せられる,小さな喘ぎ声…とまであらわしていいのかはわからないが,とにかく静かだった。

「ねえ,飛雄。日向君が私と飛雄って不釣り合いだよねー,って笑ってたよ。」
「…そうか。」
「私たちが付き合ってるって,知ってる人どのくらい?」
「いないんじゃねえか?」
「そっかー。」

なんか嬉しい,彼にそう言って笑顔を向けると目を大きく見開かれ吃驚された。「な,何?」そんな彼の驚いた顔が珍しくてそう尋ねると,「お前,あんま俺の前で笑わないだろ?」と返される。そうだっけ,彼の前以外では笑っているということ?そもそも私,笑ったことなんてあったっけ。深く考えすぎていたのか,飛雄に眉間をつつかれた。

「しわ寄ってる。」
「ごめん。でも飛雄はよく寄ってるけどね。」
「うるせー。」

少しむすっと頬を膨らませる彼を見て,私は思い出したように呟いた。

「学校では影山君,苗字さん,なのにねー。」
「今更かよ。」
「うん,いつからだっけ。」
「忘れた。」

淡々と返事を返す彼の方を向いて,私はまた呟いた。

「それも,なんか嬉しい。」
「…なんでだよ。」

小さく笑った彼に頭を小突かれて,痛いと目をつむった瞬間彼にキスをされてしまった。「不意打ちはずるい…」そう嘆く私に「不意打ちじゃなければいつでもいいのか?」と問いてきた彼に少しむかついて,反撃の意味も込め彼の胸ぐらを掴み引っ張り寄せて口付ける。

「くっそ…。」
「やれるもんならやってみなよー。」

私と飛雄の関係は,誰にも内緒だから。ね?

2013.01.29
( ◎私たちの関係 HQ/影山飛雄 )
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