fiction | ナノ
◎変なテンションの子と青峰君

高校生活一日目。早くも,変な奴に目をつけられた。

男ならまあ殴るも蹴るも自由だが,女ときた。しかも相手は俺に直接的に危害を加えたわけではなく,ガン飛ばして…っていうかこれガン飛ばしてるで表してもいいのだろうか。まあ言うとすれば見つめられてる。奴の視線を感じたのは入学式が終わったあとの,最初のホームルーム,自己紹介の時だった。付け加えれば隣の席から。

…見てる,超見てるよ首こっち向いてるの見えてるしおい。これはどうすればいいのか。何しろこんな経験滅多にない。なぜなら,奴の立場は本来なら俺の立場だからだ。しかし,奴の目線は俺の,何を捉えているんだ?俺が目的とするおっぱいは俺にはついてないが,そもそもこいつ女だわ。

だらだらと嫌な汗が流れる中,クラスの大半の奴の自己紹介を聞き逃してしまった。無論聞くつもりもなかったが。しかし妙に耳に残る自己紹介は,紛れもなく奴の,隣の席の女のものだった。無理もない,見られているせいで奴に気が行ってしまいつい自己紹介までも聞き入ってしまったんだ。

「苗字名前です。」

そう言いがたりと椅子を引き何事もなかったように座った奴…あー,苗字に,担任が「短いわ!」なんて笑いを取ろうとしているとしか思えない大袈裟なツッコミを入れていた,気がする。変わった奴だなーと気を抜いた途端またもや視線を感じ始めた。言い直そう。変人だこいつ。

ホームルーム中始終落ち着かない状態だったが,やっと終わりを告げるチャイムが鳴り一安心。ふー,と溜息をつく俺の肩を誰かが引っ掴んだ。うげ,またもや緊張状態に陥り変な声が出てしまった。誰だ,誰だ後ろにいるの。おそるおそる振り向いたそこには奴,苗字がいた。

「あーおーみーねー君!」
「うわあ!?」
「何君何君,超でかいしかっこいいなあおい!」
「あ,おう。…どうも…?」
「てか黒すぎるわ腹筋崩壊だわぶふっ。」
「…は?」

ぺらぺらと喋りだした苗字は,さっきの自己紹介の凛々しさや気だるさなんて微塵も感じ取れなくて,逆に生き生きとしている。生き生きとしすぎている。高すぎるテンションについていけず曖昧な受け答えをする俺に構わず喋る喋る。

「青峰君最高だわ何君どこの出身ですかアメリカ人?黒人さん?」
「いや,俺は…。」
「あ,わかったアフリカ人だ!」
「違えって…俺は普通に…。」
「んーでもどっちかなーアメリカ人とアフリカ人。どっちもどっちなんだよなー,まあいっかアメリカとアフリカのハーフで。」
「…だから。」

俺は普通に日本人だっての…!

「あー,うん。…もう,いいやそれで。」
「は?何言ってんのあんた日本人でしょ?」
「…。」

…こいつー…!

取り敢えず,俺はこいつと上手くやれる自身が全くない。

2013.01.26
( ◎変人女 krk/青峰大輝 )
続くかも
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