Your world is my world


知らぬ間に芽生えた思いがあった。
必死に秘めていた思いがあった。
それがようやく伝えられたのだから、私たちは今間違いなく世界一の幸せ者だ。

「ゼン…?」
「なんだ」

本当に私でいいの?そう聞きたかったけれど、至近距離で心底幸せそうなゼンの顔を見たら何も言えなかった。だけど、口にしなくてもゼンには伝わったんだろう。お前がいいんだと言ってくれたゼンに、涙が止まらなかった。

「今日は一日何をしようか?」
「何って…そろそろ起きる時間だよ。ミツヒデと木々とオビが待ってる」
「ヴィオラが寝ている間に話をつけてきた。今日は一日二人きりだ」

二人きりって。それってミツヒデたちにどう伝わってるんだろう。私が顔を赤くして固まると、ゼンがからかうように意地悪な笑顔を近づけてきた。私はそれを阻止するように枕を抱きしめ、顔を埋めた。恥ずかしい、恥ずかしい。ちらっと見えたゼンの裸に、昨日のことが思い出されて消えたいくらい恥ずかしくなった。

「ヴィオラ、意地悪しないから顔を隠さないでくれないか?」
「無理、ゼンの顔を見れない」
「だけど俺はお前の顔が見たい」

徐々に近づく声に体を強張らせていると、ふわりと力強い腕に毛布ごと抱きしめられた。大きくなった幼馴染の体に、意識してしまうのは当然でしょう?だってあんなにチビで泣き虫だったのに、こんなに立派な男の人になってたなんて。

「その顔、失礼なこと考えてるな?」

鋭いゼンは疑うように私を覗き込む。なんでゼンのこと考えてるって分かったんだろう。不思議、だけどすごく嬉しい。

「ふふふ、ゼンのその拗ねた顔。全然変わらないね」
「…うるさい」

眉間に皺を寄せたまま近づいてくるゼンの顔。ちゅっと可愛らしいリップ音を響かせて、ゼンの唇が私のそれに触れた。昨日初めて交わしたはずなのに、もう何年も前から繰り返されていたことみたいに自然な口づけだった。

「ゼン、慣れてるね」
「は?!いや、何を言って」
「…焦ってる、怪しいなあ」

分かりやすく焦り始めるゼンに笑いが漏れる。ゼンに女性経験がないことくらい分かってるよ、ずっと一緒にいたんだから。だけど私ばかりどきどきしてて悔しかったから少し困らせたくなったの、ごめんね。

「何笑ってるんだ。俺を困らせて楽しいのか?性格悪いぞ」
「ごめんごめん、めんどくさいから拗ねないで」

顔は怒ってても、声が怒ってないから怖くないよ。ゼンをからかうのはやっぱり楽しい。私が毛布で口元を隠しくすくすと笑っていると、何かにさらりと太ももを撫でられる。目の前のゼンが得意げに笑った。

「仕返しだ」
「変態だ」
「だまれ」

すうっと、線を引くように優しく撫でられる。反応したくなんかないのに、くすぐったいのか何なのか、変な感じだ。ゼンの手を掴んで思いっきり捻ろうとしたけど、その行動は読まれてたみたいで腕を掴まれた。そして、塞がれた口。あっという間に体に力が入らなくなる。

「…ゼン、目が怖い」
「すまん。獲物を見る目か?」
「私、ゼンの獲物じゃないよ」
「…俺はお前を欲してる。お前は?」

分かってるくせに。わざわざ聞いてくるなんて、こういうところはイザナ殿下に似ているなあと思う。悔しい、ゼンの心も私と同じくらい、振り回されたらいいのに。

「私もあなたが欲しい、ゼン」
「… ヴィオラ」

噛みつくようなキスだった。ゼンに全部持っていかれるような感覚だった。少しはゼンの心を揺さぶることができたのだろうか。ゼン、私今すごく幸せだよ。私は剣だけじゃない、側近という立場無しでもゼンを支えることが許される人間になったんだ。ゼンを支える。それが私の夢で生きる希望だった。これまでも、そしてこれからも。二人の歩む道は光だけじゃない。だけど、二人一緒なら。周りに光がたくさん溢れているゼンとなら、何だって乗り越えられる。そんな自信がね、不思議と湧いてくるんだよ。だから愛って不思議だ。こんな気持ちになれる日がくるなんて、私は。

「ゼン!ちょっとごめん!」
「うわっ?!」

私は優しく頭を撫でてキスを送るゼンを押しのけ、近くに脱ぎ捨てられていた服を着る。ゼンはその様子を不思議そうに眺めていた。私はズボンははいたままのゼンに向かってシャツを投げ、ゼンがそれを軽く羽織るのを見ると、すぐに手を引き部屋を出た。

「おい!待てヴィオラ裸足だぞ」
「いいから!!」

昔もよくこうやって城内を走った。大人に怒られても、変な目で見られても。ゼンと一緒にすることは何でも楽しくて仕方がなかった。願うのは、あなたにとっても私がそうでありますように。

「ゼン、着いたよ」
「…ここは」

ゼンの周りに溢れる光が集まる場所。城の一番高い場所。ここから、ウィスタリアの国を一望するのが幼い私たちの楽しみだった。

「ゼンが守るもの。だから私が守るものだ」
「…ヴィオラ」
「ここがゼンの世界の中心でしょう。だから、もう一度見ておこうと思って。これから見る輝かしいいくつもの世界に、埋もれてしまわないように。忘れないように」

ゼンの瞳に涙が浮かぶ。やっぱりまだまだ泣き虫だ。私が傍で支えて、ゼンは今よりもっと立派な人になるんだ。みんなが眩しく感じるくらい、ゼンは輝くんだろう。私とゼンなら絶対にできるよ。

「愛してる!!」

ゼンと、ゼンに関わったすべての人へ。どうかこの思いが届きますように。ありがとう、私は幸せです。

ー ー ー ー ー
END
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