初めましては、オレのいつものストライクだった。ストライクゾーンの広いオレだが、今回はストライク中のストライク。大人の色香と少女のような透明感を併せ持つ女性。しかし、女の子の魔法ってあるもんなんさね。化粧をのけたらオレより3つ程年下くらいだろうか、幼くて小さい女の子だった。

なまえが海に沈んでから、なかなか上がってこない。ノアの攻撃を必死に避けながらも、祈るのはあのちびっこの無事。頼むぞなまえ、オレの渾身の火盤、こいつにあんま効いてねぇみたいなんさ。

「おこちゃまエクソシストが、気になる?」
「無駄口たたく余裕なんかあるんさ?」

挑発すれば攻撃の重さが増した。速さも力もすべてにおいてアクマとは桁違い、底なしの強さだ。こんなところでノアと会うなんか、予想もしてなかった。ましてやなまえはノアの存在も知らないようだった。いくらエクソシストといえど彼女は年端もいかない少女。恐ろしさに逃げてもおかしくないし、誰も責めることはできないだろう。

「ああいうさ、真っ直ぐなヤツっていうの?傷つけても傷つけても目が強い意志を語ってるヤツ。狩るなら、やっぱりそういうヤツがいいよなあ」
「何が、言いたいんさ」
「眼帯くんも、そういうヤツ?」

ニヤリと不気味に笑う男。ぞわ、と寒気。距離を取らなければ危険なことは理解できていたのに、まるで金縛りのように動けなかった。その時、男の背後の海が水飛沫をあげ、幾本ものクリスタルのような結晶が槍となって男を襲う。見覚えのあるそれに、ほっと息を吐く。

「こっちよ」

今度は真反対、オレの背後から微かに聞こえた声。

「白銀星ノ弓矢(アストレア・ボーネ)!」

真横を突風と眩い輝きと共に、一本の光の筋が通った。それはノアの心臓へと向かっていたが、ノアの異常な反射神経で頬を掠めるに留まった。

「ちっ、外した」
「なまえ!無事だったんさね!」
「当たり前でしょ、なまえサマなめんな」
「驚いた。やるねえ。もうとっくに海の底に沈んだかと。わざと適当な攻撃をして、真逆の方向から”殺す”攻撃をしかけてきたのか。まあ、あの程度の攻撃じゃ俺たちノアも、そして千年公も殺すのは不可能だな」

ノアの頬からは赤黒い血がドロドロと溢れ、傷口からはビリビリと電気のような白い光が無数に出ている。あれは、心臓にまともに当たったらひとたまりもなさそうさ。

「さっきからエクソシストをなめたような口きいてるけどねえ、いずれあんたたちをこの世界から消すのは紛れも無いそのエクソシストよ!」
「…時間切れか。さっきから千年公に呼ばれてる。今日はオレの負け。イノセンスはお前らのもんだ」
「逃げるんさね」
「…次は、手加減なしで狩らせてもらう」

ノアが消えた。その瞬間、なまえのイノセンスの発動がとけ、力が抜けたようにその場に座り込んだ。オレは急いで駆け寄り、よくやったさーと肩をバンバン叩いて声をかけた。が、覗き込んだ顔にオレはぎょっとする。

「なっ、、?泣いて、、?」
「ラビが、死ぬかと思った!」

さっきまでのノアに対しての気迫が嘘のように、今のなまえはただただボロボロ涙を流す子供のようだ。オレはなまえらしからぬこの状況に、オロオロとしてしまうだけ。なんとか自分を落ち着かせて、座り込むなまえの前にしゃがみこんだ。なんと声をかけていいが、分からないが。なまえの両手には、虹色に光り輝くイノセンスが握られていた。

「ラビ、言うこと聞かなくてごめんね。海に落とされた時考えたの。任務遂行のためにら、このままイノセンスをどこか安全な場所へ運んだほうがいいかもって。でも、怖かった。私が離れたらあいつの攻撃はラビにしかいかない。私のせいで誰かが傷つけられる…!」
「うん、なまえ落ち着くさ。オレもお前もちょーっと怪我はあるけど元気だし、生きてるし、イノセンスだって無事だ。オレはお前に助けられたし、任務も遂行できた。バンバンザイさ!」

正直オレもなまえも怪我はちょーっとなんてもんではないが、それでもあのノアと会ったにも関わらずこの程度の怪我で済んだのは奇跡だ。まあ相手があまり戦う気がなかったのと、途中で消えたって言うのがでかいが。それでも少しでも震える目の前の小さい生き物を安心させようとポンポンとリズムよくなまえの肩をたたき明るいテンションで言うと、涙目で鼻水ぐしょぐしょのなまえがそっと顔を上げた。

「私…頑張った?よくできた?」
「おう!サイコーのできさ!」

親指を立て満面の笑みで答えると、なまえは静かに涙を拭って、笑った。

「ありがとう、ラビ」

う〜〜ん。やっぱりストライク中のストライク、かも。

ー ー ー ー ー
(いやいやいやいや、ありえんさ)
(最初ラビとはもう二度と任務行きたくない
って思ってた〜ごめんね!)

(ティッキー イノセンスはありましたカ?)
(いーや、ただの宝石だったみたいだな)
((ティッキーは嘘つきですネェ))

また会おう、おこちゃまエクソシスト
俺にエクソシストの強さを見せてくれ
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