また、私たちの旅が始まる。荷物をまとめながら、窓からのぞくイギリスの綺麗な風景を目に焼き付けていた。もしかしたら、もう来ることはできないかもしれないから。

「準備できましたか?」

振り向くと扉のところにアレンが荷物を持って立っていた。私は急いで荷物を詰め込み、立ち上がる。

「うん、今できた」
「じゃあ、行きましょうか」

二人同じくらいの荷物を持って教会を出ていく。すると、そこにはマザーとバーバが待っていてくれた。

「二人共また来て…な、ぐす」

バーバはなぜか泣いているし、マザーに至ってはいつにも増してぶすっとしている気がする。短い間だったけれど、二人のことをたくさん知れた。トランプしたりお墓掃除手伝ったり、料理もバーバに教えてもらいつつ下手なりに頑張った。マザーは見た目とは違って、本当は優しい人で、私がなかなか眠れなかった日は、話を真剣に聞いてくれた。

「マザー、バーバ」

ここでの毎日は温かかった。思い出したら、私まで泣きそうになってくる。

「ありがとう、ございました」

ああ、堪えられなかった。涙がぽろりと頬を伝う。隣に立っているアレンはもちろんバーバとマザーまで目をぎょっと見開いている。

「なまえ?!」
「だ、大丈夫かぁ?ぐすん」
「何泣いてるんだい」
「だっでぇぇぇ、」

私がごしごしと顔をこすっているとマザーに両手を握られた。

「なまえ、アレン」

マザーは私たちを見つめ言う。

「強くなりなさい、二人どんなときも支え合って」
「「 はい! 」」

二人声を揃え元気に返事をすると、一瞬だけマザーが優しく微笑んだ。強く握られた手が温かかった。




ガタンガタン

汽車の中、木で作られた椅子に背を預け、窓から外の風景を見る。とっくにイギリスの風景は見えなくなってしまった。

「…アレン」
「なんですか?」
「マザーたちと知り合えて、私は師匠とアレンにまた少し近づけた気がする。師匠とアレンには、あんなに素敵な味方がいたんだ。私…それがなんだか嬉しくて。あそこに行けて、本当によかった」
「なまえ」
「これから先、何があっても傍にいるから。離れてなんてあげないからね」

少しの沈黙の後、隣に座るアレンがふっと笑ったのが分かった。

「だからアレンも傍にいて」
「うん、約束する」

指切りの代わりに、顔を見合わせて、笑い合った。君が傍にいてくれたら、それだけできっと頑張れるんだ。新たな始まりに、新たな誓いをたてた。

― ― ― ― ―

(なんか僕感動して、泣きそうになっちゃいましたよ)
(ははっ 泣き虫だなあ)
(さっきビービー泣いてた君に言われたくないんですけど)
(うるさい白髪)


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