「あれ、金ちゃん居らへんのか」
「あ、財前先輩」
どっこいしょとかじじくさいことを言いながら私の前に座る財前先輩。
「じじくさいとはなんや。あ?」
「いだだだだだ!痛い痛い!頭掴むの止めてくださいよ!」
「はははー」
「楽しんでません!?」
「飽きたわ」
「私は玩具かっ」
突っ込みも程々に、遠山に何の用があったのかを聞く。「別に用あるわけやないけど」……前から思っていたけど、もしかして財前先輩は友達が居ないから遠山のところに遊びに来るんじゃ…。
「あー、そや、聞け」
「何ですか」
「ウチの部活にスピードスターとか言うとるショボい先輩が居るんやけどな」
うわー…敬う気ゼロじゃねーかよ。
「大会も終わって引退したから部活に顔出す回数も減ってウザさも半減するやろ思っとったんや」
「はあ…?減らなかったんですか?」
「いや、毎日は来んくなった」
「じゃあいいじゃないですか」
「ちゃうわ。話最後まで聞け」
「いだっ!次は拳骨!?」
「今日の朝練に来とったんや」
「そうなんですか。良かったですね」
「良おないわ。あの人、何て言うたと思う?」
「……久しぶり?」
「…『ははー!お前部長の癖して俺より遅く来るとはまだまだやなあ!まっ、浪速のスピードスターは永遠不滅的な?』」
小馬鹿にした表情で人差し指をこちらに向け、そう言った財前先輩。
「うっわうざあああああ」
「せやろ?プギャーやぞ?プギャーて、ホンマ腹立ったわ…」
「いたっ!だからって私の頭叩かなくてもいいじゃないですか!」
「叩いとらん」
「叩いたでしょ!?」
「殴ったんや」
「質が悪い!」
「あ、予鈴鳴ってもうた。行くわ」
そう言って去っていく財前先輩。嵐が去ったような心の静けさにため息を吐く。
それにしても遠山、どこに行ったんだろう。お昼御飯食べ損ねてるじゃん、あいつ。
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