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天女様がおちてきた!
下級生がざわざわと騒いでいたから何事かと耳を済ませてみれば、飛び交うのは“天女様”という言葉だった。天女といえば天界に住まうと言われている架空の存在のはず。いや、“天女様”というのが下級生なりの例えであることは分かるが何故“天女様”と称されたのかが気になる。


「乱太郎、きり丸、しんべヱ」

「あ!澄宮芹せんぱいだ!こんにちは!」

「澄宮せんぱーい、こんにちわあ」

「ちわーっす!何か用でもあるんすかあ?」

「こんにちは。いやね、天女様がおりて来なさったと小耳に挟んだものだから」

「あぁ、天女様っすか。未来から来た」

「すっごい甘い匂いするんだよお」

「とても美しい方でした!手もお姫様みたいに綺麗でしたし!」


矢継ぎ早に出てくる情報を「へえ、」と相槌を打ちながら整理する。とても甘い匂いのするお姫様のようで未来から来た美しい人、ねえ……は?


「未来?」

「そうっす。天女様がおりてきたときに未来から来たのよ!って」

「そういえば言ってたねえ」

「きりちゃんよく聞いてたね」

「ふうん、そうなんだ。ありがとね、三人とも。あーあ、私も天女様見たかったなあ」

「今は学園長先生の庵にいらっしゃると思いますし、そのうち会えますよ!」

「そうかな?ふふ、それは楽しみだ。あぁ、そうだ。色々教えてくれたお礼に団子でも奢ろう。もちろんタダで」

「タダぁ!?」


あひゃあひゃとだらしなくよだれを垂らしながらタダという言葉を繰り返しているきり丸を宥める乱太郎としんべヱに別れを告げ、学園長の庵の方へ歩き出す。未来から来ただなんてとんだ狂言、学園はどう処理するおつもりなのか気になるが、それよりも厄介なことになりそうな予感ばかりがするのが気になる。

何事も、なければいいのだけれど。



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