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「転校生の第一印象はパツキン、それとギャグセン高ぇ」そう丸井は語った。誰に、とは言わずもがな同じ組の仁王である。
眠そうにその話を聞いている仁王に丸井は続けた。「んで、第二印象は、やっぱギャグセン高ぇやつ」だからどうしたと仁王は口を開きそうになったが、言ってしまえば面倒な事になることは彼の経験から分かっていたので開かれることはなかった。


「で、第三印象が…」

「ちょ、待ちんしゃい」

「なんだよぃ?」

「あいつが転校してきてまだ2日しか経っとらんじゃろ!そんな短期間で第三印象!?」

「3日だっつーの。いや、聞けって。正確には1日でそこまでいったんだし」

「は!?」


あいつと関わるとツッコミに回らざるを得なくなると思っていたがあいつに関わった人間と関わっても俺はツッコミ!?と自分にツッコミを入れる仁王の複雑な心境を丸井が分かるわけもなく、丸井は強引に話を続けた。


「気持ち悪いんだよ、あいつ」

「そんなん、他の女も変わらんじゃろ」


すっかり目が覚めてしまったらしい仁王が、冒頭と比べ割りと真面目に答える。頬杖をつきどこを見ているのかわからない視線は彼の心情を表しているようだった。特定の女性と付き合うわけでもなく、長く一緒に居るわけでもなく、ふらふらと色んな女性を隣に置く仁王は何を考えているのか、そんなことは彼にしかわからない。


「ちげーよ、そういう気持ち悪いとかじゃないんだよぃ」

「わけわからんなり」

「俺だってわかんねーよ。ただ、あいつを見てるとムカムカするっつーか…、いや、話してる時とかはムカムカしねぇんだけどな、すげえ、殺したくなるんだよ」

「ブンちゃん怖い」

「俺、真面目に言ってるんだけど」


少し怒気の含んだ視線に「おおこわいこわい」と軽口を叩きつつも、仁王は丸井の纏まらない言葉に同意していた。ネットスラングを用いるならはげどはげど!といったところである。
安里雪と関わったことといえばほんの僅かな出来事であったが、彼女に対して抱く不快感は異常だった。丸井には悪いが、仁王は第一印象から彼女のことが気持ち悪かった。
まるで得体の知れないモノ、そしてこの世のものではないような雰囲気。未だかつて出会ったことがないと断言できるような存在。あの細い首をぽきりと折ることができるならば仁王や丸井は即座に行動に移していたかもしれない。
人間とは自分と違う人間を排除したがる。世間で騒がれる虐め然り。自己主張の激しい人間ならば余計に、そうであろう。


「あんなやつ、俺は認めとうない」

「話せばなんともないんだけどなー」

「それ、毒されとるんじゃなか?」

「……おい、そういうこと言うなよ。なんか安里を見るときの気持ち悪さが…」


口元に手をやり、いつしかの安里のように青ざめる丸井を見て、どうにかせんとな、と仁王は思案した。


「なんとかしねえとなー…」


と、それは丸井も同じだったようで、心底困ったようにそう言う丸井に仁王は「刃音に相談してみるのが一番かもの」と呟いた。それに丸井は当然のように「だよなあ…」と同意した。