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それは、回想から入る。


「兄上、お久しゅうございます、刃音でございます」

『…あぁ、刃音か。葬式以来だな』

「…そうでございますね。あ、その、葬式と関係のあることなのですが、その…」

『…なんだ?』

「零崎を、零崎を見つけたのです」

『……零崎を?』

「は、はい!ですから、私にもその、兄上達の計画に…」

『駄目だ』

「し、しかし!」

『お前は実戦経験も無い上に俺達の中で一番弱い』

「足手まといにはなりません!」

『それに、お前も俺達の大切な妹だ』

「…っ、ですが、仇を、…仇を取らねば私は気が狂ってしまいそうなのです。近くに憎き零崎が居るというのに、あの子を殺した零崎かもしれないのに、」

『……考えるな』

「っ」

『抑えることも、強みへの道だ』



「あぁ、兄上」


どうして私を置いて逝ってしまわれたのですか!悲痛な叫びは広い部屋の中に霧散して消える。しかし、今にも泣き出しそうな声にも関わらず、彼女は泣いていなかった。否、泣けなかったのだ。刃音は兄上達が零崎に仕掛けるであろう何かの計画を一ミリたりとも知らされてはいなかった。ただ、お前はまだ弱い、零崎を潰すのを待っていろ、と拒絶されてばかりであった。刃音とてそれが悪意からではなく、巻き込みたくない一心からであることは承知していたが、それでも最愛の妹を殺した零崎をひと目見ることも叶わないということが納得できなかったのだ。


「安里雪…」


だがしかし、今は違う。どこの誰とは分からぬが、刃音に情報をもたらした誰かが居た。“零崎双識”“顔面に刺青を施した白髪の男”“新たな零崎”そして、“それらに殺された兄達”彼女の机に置かれたノートパソコンに映しだされた画面には“立海第附属中学校生徒名簿”と書かれており、更に雪の顔写真が出ていた。刃音は憎々しげにその画像を見つめた。


「……殺してやる」


冷静など疾うの昔に失っていた刃音の瞳には復讐しか写っていなかった。