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「あっ、もっしもーし。友ちゃん?え?あ、う、うん…、二週間ぶりって言えばいいと思うよ…。細けーよ…。っていうかさ、今立海大附属中学校ってとこに通ってるんだけどね、え、知ってる?あ、そうっすか…流石…。でで、まさかのこの学校、二年生で修学旅行なわけですよ。もうすぐなわけですよ。修学旅行だよ!?行かねば損だよね!?うんうん、やっぱり友ちゃんは分かってるぅー!うにうに!ってことでなんとかして私も修学旅行、みんなと行きたいわけですよ。積立?とかなんかあるっぽくてさあ。……え?できる?まじか!ふふふ、ありがっとー!…………あ、で、さあ。ついでだから死体処理もお願いしていい…?…てへへー、つい殺しちゃってさー…。いや、今回は二人しか殺ってないよ!?い、いや、そりゃあ確かに一ヶ月一人って決めてたけども……あーっ、もう、とにかくよろしくね!ぐっばい!」


薄暗い路地にて金髪の少女が携帯を片手に佇んでいる。人気のないそこには太陽の光すら届かないようで、どんよりとした空気が漂っている。少女は煩わしげに髪を払い、その足元にあった頭を足で蹴った。血に濡れたローファーは酷く生々しく、恐ろしいまでに赤黒かった。「汚れちゃった、」無感情にそう言うと少女は辺りを見渡した。少女以外は他に誰も居ないことを確認した後、ゆっくりと歩き出した。―――少女以外には誰も居ないというのには語弊があるだろう。少女の足元には人だったモノが無残に転がっていた。喉をボールペンで一突き。その傷口は少女の未熟さを物語るように、美しくはなかった。


「ふぁあ…、なんという小春日和…。つっても太陽見えないけど」


ぼそりと独り言を呟く少女。高いビルに阻まれ空すらまともに見えない上を見上げながら黄昏ても、まったく格好良くはない。…………零崎、か。そう、少年は思った。少女が誰も居ないと認識したその空間に少年は居た。彼は最初から居た。少女がその路地に入り込む前から、ずっと。―――まだまだだね。小学生ぐらいの背格好の少年は白色の帽子を深く被り、ニヤリと小さく笑った。
おもしろいもんみーっけ。