東京に海があるのかは分かりませんが、海が出てきます。 「トーカちゃん!」 全ての授業が終わって、帰宅の準備をしていると、ぎゅっと後ろから勢いよく抱きつかれたせいで喉の奥から変な声が出てしまった。大抵クラスの子達でこういうことをするのはこの子くらいだろう。 「なまえ、危ないじゃないか」 「うん、ごめんね!あのね、花火しよう!」 あ、こいつ話聞いてないな。と、呆れながらも爛々とした瞳のなまえの話に耳を傾けた。 「花火って?」 「昨日花火をお爺ちゃんに貰ったんだ!トーカちゃんとしたいなって」 「へー、いいじゃん」 「でしょう?さ、行こう!」 「え?今から?」 「今から今から!」 手を握られてぐいぐいと引っ張られる。廊下を駆け抜けていくなまえの小さいけれど頼り甲斐のある背中を見て、ふと笑みが零れた。
▽ なまえの自転車で校則違反の二人乗りをして風を切る。変な歌を熱唱するなまえに笑いが止まらなかった。彼女と一緒にいる時は自分が喰種ということも忘れられる。とても明るい性格の持ち主だ。「ついた!」ガシャンっと自転車を停めて、海を見つめるなまえ。つられて私も海を見つめた。薄暗くなりはじめた空の色にうっすらとオレンジが海に反射してとても綺麗だと思った。 「花火持ってるの?」 「もっちろん!リュックに入れてあるよ」 ごそごそとリュックを探して、じゃーん、と彼女が取り出したのは花火セットとマッチ。はいはい、と渡された花火にマッチで火を着けると、パチパチとした音とともに火花が散った。 「見て見て!トーカちゃん!」 なまえの方を見ると、両手に花火を持ってくるくると回り出した。危ないよ、と声を掛けても、彼女はからからと笑う。火花が収まって、新しい花火に火を付けた。パチパチと燃える花火を見つめていると、線香花火に火をつけたなまえに声をかけられた。 「ねえ、トーカちゃん」 「んー?」 「わたしトーカちゃんのこと好きだよ」 唐突の言葉に目を丸くしてしまう。恥ずかしげもなく笑っている彼女に、驚かせれるのは何度目だろう。呆然としていると、「トーカちゃんは?ねえねえ!」と火玉が落ちてしまった線香花火を眺めながら彼女が尋ねてきた。 「え、その…」 「その?」 「き、嫌いじゃないよ、あんたのこと」 「…トーカちゃんがデレた!」 「っうるさい!」
Song by... peach / 大塚愛
Dear りちか様 この度は素敵なリクエストをありがとうございます。可愛い女の子大好きなので書いていてわくわくしました。女のコ万歳。応援のお言葉もありがとうございました。もし何かありましたら、いつでもお気軽にどうぞ。
|