幼馴染の彼はいつだって賢くていい子ちゃんが大嫌いでストイックで、弱い。 今日の試合もラフプレーを混じえた戦法で勝利をした霧崎第一。ラフプレー抜きでも弱いわけではないのに、そんな風に戦っているのは何故なの、と真くんに聞いたことがある。彼は、いい子ちゃんを見ているとムカつくから、と言っていた気がする。 真くんはきっと誰かに心の中に入ってこられるのを恐れている。あんなに強くて恐いと思われている彼が、私にはいつ壊れてしまうのか怖くなるほどに脆く見えてしまうんだから不思議。 体育館の後片付けを終えて、部員達がでてくるのを待っていると、「花宮、この後あいつらとご飯食べに行くけどお前は?」という声が聞こえた。たぶん一哉くん。 「俺はいい」 「そっか、じゃね〜」 予想は的中、まだ更衣室の中にいる真くんにひらり片手を上げて更衣室から出てきたのは一哉くんだった。体育館の出口にいた私を見つけた一哉くんが「あ、なまえちゃんもどう?一緒に」と尋ねてきた。 「ううん、大丈夫、行ってきて」 「そ?じゃ、行ってきまーす」 「またねん」とひらひらと手を振ってみんなのところへ向かう一哉くんの背中を見送った。 更衣室にはただ一人、彼がいる。 更衣室の扉の隙間からちらりと見えたのは、既に着替えを終えて長椅子に腰掛けている真くん。小さく息を吐いて中に足を踏み入れると、真くんはこちらを一見して逸らした。 「まだ帰ってないのか」 「うん…」 「…送ってく」 「あ、待って」 そう言うと、訝しげな表情をした真くんがこちらを見た。一歩ずつ近づいて、真くんの前に立つ。立ち上がろうとした刹那、彼を抱きしめた。 驚いた彼は何も言えずにされるがままに椅子に逆戻りした。思っていたよりも大きくてちいさな背中を撫でるとぴくりと彼が動いた。 「え、と、おねがい、何も言わないでね。私がしたいだけだから」 「…バカなのか」 「うん、ごめんなさい」 左手で彼の綺麗な髪を撫でる。さらさらと指をすり抜ける髪は彼の心の奥の奥を写しているみたいで、優しかった。 腕の力をほんの少し強くして抱きしめると、 腕の中の彼が、たぶんだけど、ほんの少しだけ笑ったような、気がした。 Song by... しなやかな腕の祈り / cocco ▽Dear チー様 チー様お久しぶりでございます。この度はリクエストありがとうございました。大変遅くなってしまい申し訳ありません。あまり花宮くん弱いところを出せてないです!このあともっと主ちゃんに甘えてくれると思います…!送っていただいたどの曲も霧崎メンバーにぴったりですね〜!お祝いの言葉もありがとうございました。もし何かありましたら、いつでもお申し付けください。
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