最近、ストーカーにあっているんです。



「血、くれますか」

きた!このストーカーはいつも気配なく突然私のまえに姿を現す。そしていつも夜に。暗闇に紛れて現れる彼は一体どんなトリックを使っているのかいまだに分からない。これで合計何回くらい会ったのだろうか、二桁は軽く超えていると思う。そして彼は毎回同じことを言う。

「血、くれますか」
「嫌です。あの、いい加減その変なコスプレはお辞めになった方がいいと思います!」

よく言った私。ずっと思っていたことを遂に言うことができました。今の時代こんな、吸血鬼のような格好をした人なんていませんよ。付け八重歯までしているけれど、私のような大の大人には受け入れられない。

「コスプレ?」
「はい、吸血鬼なんて設定も何時迄も続かないですよ。芸人さんですか?それにしても何故私なのでしょうか…」
「……」

芸人さんならこんなところで私に構うよりも他に良い場所があるだろう。ちらりと彼の瞳を見ると、カラーコンタクトだろうか、赤い瞳だった。はぁ、と彼がため息を吐いた。ため息を吐きたいのは私の方だ。そろそろ帰って晩御飯を作りたい。ほぼ毎日彼に引きとめられる身にもなって欲しい。

「じゃあ、お仕事がんばってください。応援してま「待って」…す」

彼の横をそそくさと通り過ぎようとした時、手首を掴まれた。

いつもならここで見逃してくれるのに今日は何だかしつこいようだ。なんですか、と振り向くと「分からせて、あげましょうか」と不敵に笑った。

ははは、また何の冗談ですか。そう言って手首を解放してもらおうとした刹那、彼が私の手首を彼の口元に近づけて、舐めた。

生暖かいはずの舌が、何故か血が通っていないかのように酷く冷たくて、背筋に悪寒が走って体の芯から冷えていくような感覚に襲われた。

そこで彼は終わらなかった。

舐められて冷たくなった箇所に彼の付け歯だと思っていた歯を突き刺したのだ。鋭い歯が皮膚を貫通する感覚に、声にならない声が喉の奥から出てしまう。

彼は手首から口を離すと、手首に空けられた穴を再び舐めた。そしてキスをするように穴を唇で塞いだ。手首からからどんどん血が吸われていくのがわかった。変な感覚が身体中を支配して、掴まれたままの手首に力が入らない。彼の赤い瞳はいつにも増して鋭いような気がするし目を離したいのに動くことができないしどんどん立っているのが辛くなるしもう、だめかもしれない。

ぷつん、と意識が消える音がした。
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