小さい頃から私は霊感が強かった。物心着く前からそういう類のものは見えていたからか、恐怖心はあまりない。周りの人にはおかしな子供だと思われていただろうけど、私は小さな子供の幽霊達と戯れるのが楽しかった時もあったのだ。今では人前で幽霊達と会話したりすることは控えているおかげで友達は増えたし両親からも冷たい目で見られることは少なくなった。

私が小さい頃からずっと一緒にいる幽霊がいる。いわゆる背後霊なのだろう。今まで会ったことのある幽霊の中でも一番はっきりと輪郭がわかる幽霊で、触れることはできないけれど、彼が私の身体を掠めると冷たい風に触れられたみたいに感じられる。



「疲れた」
「おつかれ、なまえ」
「うん、ありがとう」

一日の学校が終わって部屋に入って気を抜くと、疲労感がどっと襲ってくる。ベッドに倒れこんで溜息をつくと、ふわっと冷気を感じた。私に声をかけてくれたのは、彼だ。俯せの身体を左半身をしたにするように横向きに変えると、目の前に彼が現れた。

「康次郎くん、」

康次郎、というのは彼の生前の名前らしい。自分の話をあまりしない彼から教えられた数少ない情報の一つである。というか、生前の記憶はあまり残っていないらしい。

私に向き合うようにしてベッドに横たわる(ように浮いている)彼は相変わらず顔が蒼白だ。私が幼い時から、彼は私のそばから離れたことはない。学校や外では私に気を使って姿を消しているけれど、私が会いたいと思う時は必ずそばによりそってくれた。辛い時だって彼は変わらず優しい。

「気にすることじゃない」
「え?」
「なまえは、悪くない」
「そうかな」
「ああ」

きっと、彼は見ていた。

私が学校に残って数人の友達と話している時に、悪戯っ子な子供の幽霊が現れたのだ。いつもなら何もいないように過ごすだけなのだけど、今日は違った。その子供の幽霊は私が見えていることを分かっていて、わざと私に悪戯を仕掛けたのだ。机の上の教科書を奪ったり、シャーペンを投げたり、周りからみたらものが浮いて、それを追いかけているようにしか見えなかっただろう。どうしたの?とみんなの目が語っている。目は口ほどにものを言うのだ。明らかに厳戒な目で見られている。またやってしまった。

怖くなって、友達に「ごめんちょっと先に帰るね」と言って逃げ出した。家に帰って「ただいま」と言っても、家族からの返事はない。

いつの間にか瞳に滲んだ涙がこぼれ出した。彼が私の涙を拭うように指で頬に触れる。けれど、涙は彼の指を通り抜けるだけで、私の頬にも冷たいものを感じるだけだった。

「俺は、そばにいる」
「うん、ありがとう」

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