「なまえさん、メール来てます」

そういって彼が差し出したのは未読のマークがついた白いお手紙。え?さっき誰が喋ったのか?わたしも今でも不思議でなりません。彼は携帯電話だというのです。はじめて人の姿に変わった時は叫びました。ええ、そりゃ、いきなり人が飛び出すんだもの。自分をケイジと名乗った彼は「なまえさんとお話がしたかったんです」と頬を染めていました。と、昔話は置いておきましょう。

「ありがとう」とお手紙を受け取る。会社の先輩である菅原さんからでした。『なまえちゃん、今日は助かりました!ありがとう。今度何か奢らせてね』と書かれている。そういえば今日は菅原さんの落し物をお届けしたんだった。たったそれだけなのに律儀にメールを送ってくれる辺りが、先輩のモテる要素なんでしょうか。見習います。

なんて返信しようか、ベッドの上で座り込んで唸っていると「菅原って誰ですか」と隣にぴったりと寄り添うようにケイジくんが隣にしゃがみこんだ。

「会社の先輩」
「…受信拒否にしときます」
「何で?!」
「あとこの黒尾って男もやたら電話してきますよね」
「部長だもの」
「………」
「ちょっとちょっと、受信拒否しないでよね?!」
「…仕方ないですね」
「あれだよ、一緒にいる時間は、ケイジくんのが長いんだから」
「ですよね」

ほっ、よかった、機嫌が治ったみたい。彼の扱い方を心得てきている。彼は少し、いや結構、嫉妬深い…携帯に嫉妬なんてあるのかは分かりませんが、わたしが男の人と絡むのがあまり快くないみたい。一度本当に受信拒否されたことがあるのでそれ以降彼には歯向かわないようにしています。

「あ、そういえば木兎って人は一週間前から着信拒否してます」
「なにしてるの?!」
「すごく煩いので」

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