もう近づかないでおこうって思ってたのに、気づけば目で追ってる自分がいた。



あのあと二人がどうなったのかは分からないけどあの様子じゃ王様は彼女に対して「あいつに近づくな」ぐらいは言ってそうだと思う。

王様にライバル視されるのも面倒だしもうあの二人には関わらないでおこう、そう思って過ごしている。

けど、やっぱり昼休みになると渡り廊下の窓越しに彼女を覗き見している自分がいて本当に、うん、情けない。

さりげなしに、ちらりと、花に水をやっている彼女を見てはよくわからない感情にちょっと苦しくなる。これだから嫌なんだ、恋愛なんて。口に咥えていたストローに鬱憤をぶつけるように歯で噛み潰した。

「ツッキー」

不意に聞こえた山口の声にハっとする。

「なまえちゃんと何かあったの?」
「何が?」

いま聞きたくないワードが耳に入ってつい山口に対して嫌な顔をしてしまう。困ったように笑う山口から目を逸らして既に空っぽのジュースをゴミ箱に捨てた。

「あんなに絡んでたのに、急に喋んなくなってるから」
「べつに、そんな絡んでないデショ」
「えええ、そうかな?」
「そうだよ、第一あの子は、」

影山の恋人、そう言おうとしたのに、喉の奥に突っかかって声に出せなかった。「あの子は?」と不思議そうに首を傾げる山口に、何か言わないと、そう思って口に出したのは一番自分が傷つく言葉だった。

「僕のことなんか好きじゃないデショ」

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