月島くんについて一度飛雄に尋ねたことがある。その時のことは鮮明に覚えている。

バスケ部マネの仕事があるとき(ちなみに週二回)はバレー部と同じ時間に下校できるので飛雄と帰ることにしている私は、その日も飛雄と一緒に帰っていた。少しでも長く過ごしたいから、という理由で帰り道をゆっくりゆっくり歩く私たちを照らすのは太陽でも夕日でもなくもうお月様だった。

「ねえ、月島くんってどんな人なの?」「月島ぁ?」飛雄の唯でさえむすっとした仏頂面がより一層仏頂面になってしまった。若干頬が引きつりつつも「うん」と返答すると「性格が悪い」と言い放った。「性格悪いの?」あの人はそんな風には思えないのだけれど。首を傾げて問いかけると、「つーか、なんだよ」と一歩私に近づく飛雄。あれ、と思った時には、眉間にシワを寄せた飛雄がすぐ近くにいた。「他の男のこと、聞くなよ」とぎゅ、と腕の中に閉じ込められた。首筋に当たるサラサラの髪がくすぐったい。彼は、少し嫉妬深いのだ。「ごめん」と謝って腕を彼の背中に回すと「これでチャラな」と唇を奪われたのだった。





「ねぇ、聞いてるの?」
「うん、聞いてる」

月島くんの声でふと我に返った。つい最近のことを思い返していた。そういえば、月島くんはさっきなんていったんだっけ。

「影山と別れて僕にしない?」

そうそう、さっきもそんな感じだった。

「月島くん、からかってるの?」
「からかってないよ」

夕暮れに染まり始めた窓に視線を移す月島くんの色素の薄い髪が橙色とリンクして眩しいくらいだ。

「それってさ、私が飛雄の彼女だから?」

だから私に近づいてるの?

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