なんかいつもと違くない?

まさかそんなに早く気づいてくれるのが菅原だとは思わなかった。

「わかる?」
「うん、なんか光ってる」
「はは、グロスだよ」
「グロス?口紅的な?」
「うん、つやつやしてるでしょ」
「うん、美味そうだべ」

「ん?」なんだかいまおかしなことを言われたような気がする。何て?と聞き返そうとしたら、菅原がいつも以上に至近距離の位置に近づいていることに気がついた。「近くない?」へへ、と笑いながら一歩下がると菅原ももう一歩近づいてくる。引いて近づいてを繰り返しているとついに行き場をなくしてしまった。後ろには壁である。

「え、菅原…!」

「こめん無理」と口早に言った菅原は後頭部に力を加えて唇を重ねてきた。驚いてまぶたをぎゅっと閉じてしまう。ちゅ、と軽く吸って離れた唇は少し湿っている。頭がついていかなくてぼうっとしていると「そんな大人しくされると、この先もしていいのかと思っちゃうんだけど」と耳元で囁かれた。

「ち、ちがう!」と菅原の肩を押すと少し距離が開いた。

「はは、そんなに拒否られると辛いな」
「いや、あの、拒否っていうか、え」
「あのさ今言うことじゃないんだけど、俺なまえのこと好きなんだ」
「…じゅ、順番が…」
「ごめん!その、抑えらんなかった」
「あ、あの…」
「その、ごめんな、俺…」
「あの!私も好きだよ、菅原のこと」
「え、ほんとに?!」
「そうじゃなかったら菅原のこと今頃殴り倒してるよ!」
「はは、だよな!やった!」

「わ!」脇の下に腕を入れられて強く抱きしめられる。菅原の髪の毛がふわふわと触れてくすぐったい。ぎゅ、と抱きしめ返すと抱きしめられている腕の力が強まった。せっかく綺麗にグロス塗れたのに。




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