私の幼馴染の田所くんと同じ自転車競技部の巻島くんはとても派手でかっこよくて優しい素敵な人だ。そんな人に私が惹かれるのに然程時間はかからなかった。一年生の時に同じクラスで田所くんの友達ということもあり、何度か話しているうちに惹かれていった。巻島くんはきっと私のことなんて眼中にないのだろうけど…。田所くんと話している時もぎこちない返事が返ってくることが多い気がする。それでも、私は目が合うたびに嬉しかったり、他の女の子と話しているだけで切なかったりしてしまう。三年生になってもそれは変わらない。部活に入っていない私の高校生活の基盤は巻島くんのような気さえする。 * ある日の昼休み、田所っちの食堂帰りに出くわした。よぉ、と満足そうな笑顔で話しかけてくる田所っちにこちらも小さく手を挙げて応える。そういえば、と田所っちが俺の耳元で「なまえとはどうなんだ?」と聞いてきた。 なまえというのは一年の頃同じクラスだった、田所っちの幼馴染。別格仲良いわけじゃねえけど廊下ですれ違ったら挨拶する程度。そして俺は絶賛片想い中。コミュニケーションが苦手な俺にも優しく話しかけてくれて笑いかけてくれる。派手な髪のこともオシャレって言ってくれるくらいには優しい。まあそんな出来た子が俺に振り向いてくれるわけないっショ。 「あ?別にっショ」 「お前らいつまでそのままのつもりなんだよ」 「田所っちには関係ないっショ」 「おいおい一年の時からお前らのこと見守ってる身にもなれよ」 「見守られてるっていうより無理やりくっつけようとしてるだけっショ。向こうは俺に気なんてねぇの」 「(こいつなんでわかってないんだ)」 なまえと巻島は、お互い好きなくせにお互いのことを誤解してる、いわゆる両片思いってやつだ。一年の頃から見てきた俺にしちゃあいい加減素直になれってことだけ。お互いチラチラと盗み見して目があったら顔赤くして逸らして…って付き合いたての中学生かってな。そんな二人はどちらも自分を過小評価し過ぎてる節がある。人の色恋沙汰にあまり深く突っ込むつもりはないが、まあどちらも大切な友人だしできれば早くくっつけってのが本音だな。 「あ、田所くん。巻島くん。」 「よぉなまえ」 「…ショ」 「金城くん知らない?」 「金城なら職員室だと思うぜ」 「そっか、じゃあ「すぐ戻るだろうし、ここで待てばいいんじゃねえか?な!巻島」 「え、あ、そうしたら、いいッショ」 「あ、ありがとう!じゃあここで待つね」 「おう!じゃ、俺は食堂行ってくる」 「!さっき行ったばっかッショ!」 「あんだけじゃ足りねえんだよ!(がんばれ巻島!)」 「(なにががんばれだ!二人とか、ど、どうしたら…)」 「ま、巻島くん」 「なん、ショ」 「ごめんね、私やっぱり職員室に行った方がいい「ま、待つっショ!」 勢いで腕を掴んでしまった。初めて触れた二の腕は細くて柔らかい。待てって言ったくせに何言っていいのかわかんないってダサすぎっショ…!! 「あ、あの」 「ご、ごめん…」 「私こそ…ごめんね」 「え?」 「巻島くん、あ、あんまり私のこと好きじゃないでしょ?なのに、気を使わせちゃって…ごめんなさ「は?!嫌いなんて思ってないっショ!!」 巻島くんの大きな声に驚いた。てっきり巻島くんは私の事を好きじゃないんだと思い込んでいた。驚いているのは私だけじゃないみたいで、巻島くん本人も顔を赤くして焦っている。なんだか可笑しくて少し笑ってしまった。 「あの、その、俺…お前のこと、嫌いじゃ…ないっショ」 「うん、ありがとう。私もだよ」 「や、なんつーかそういうんじゃなくて…その!」 「そんな、私に気使わないでいいよ。無理して「無理じゃない!俺、お前のこと、好きっショ!」 「うん、私も」 「へ?」 「改めて仲良くしてね。巻島くん」 「え、意味わかってない…ショ?」 「ん?」 「likeの意味じゃないっショ!」 「え、やっぱり嘘だった…の?」 「違っ…!だから、I love youの方っショ!!」 この時誰が一番驚いたって俺っショ。自分がこんなこというと思わなかった。思いたくなかった。恥ずかしすぎてなまえの顔見れないっショ…。あー、これどうやって謝ればいいんだかさっぱりっショ! 「あ、俺、その…」 「ま、巻島くん!!」 「!」 「私も、likeじゃなく…好きです」 耳を疑った。なまえちゃんが顔赤くしてこっちみて「好き」って。なにこれ夢でも見てんのかな。とりあえず泣いていいか。 その後、職員室から帰ってきていた金城に全て見られていたことを知り、俺の声を聞いていた周りの奴らの噂も広がり、部活で(主に鳴子に)弄られるようになるのに時間はかからなかった。
▽月陰様!この度はご参加感謝です!巻島くんじゃない感がはんぱじゃなくて本当にすみません…!「I love you」って言わせたかっただけですすみません…!!苦情はいつでも受け付けております!リクエストしていただきありがとうございました^^
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