突然だが、私の母は再婚である。 そして再婚相手のいわゆるわたしの父は、一人の息子を連れていた。 そして現在 わたしと二歳違いの弟である。 わたしの弟である康は、私に恋心を抱いているらしい。それに気づいたのは遅くはなかった。生み親が違っていても姉と弟。許されない、と理解していながら、私も彼に恋をしてしまったらしい。どうしようもない姉である。 だから、いつかこんな日がくることもなんとなくわかっていた。 リビングで本を読んでいた私に「勉強を教えてほしい」と頼んできた康。断る理由もない、しかも親の手前、承諾するほかなかった。康の部屋に入ったのは数えられるほどしかない。さっぱりした部屋でテーブルが中央にある。奥はベッド。私はベッド側じゃなく扉側の絨毯に座る。 そして一時間ほどたったころ、真面目に教えられていた康が、突然シャーペンを置いた。 「姉さん、話が、あるんです」 「私は、ないよ。ね、勉強しないとダメなんだよね?来週テストなんでしょ」 テーブルの上に広がるワークと教科書をシャーペンでトントンと叩いて示すと、康はわたしのシャーペンを握る手を手首ごと掴んでしまった。反動で落としたシャーペンはテーブルから床に転がり落ちた。 「姉さんは、ずるい、です。どうしていつも、そうやって大事な時に、逃げちゃうんですか?」 「逃げてないよ。康。あ、疲れちゃったかな、お茶でもとってくるから手を「じゃあ、ちゃんと、見て、」 掴まれていた手首を思い切り引っ張られ、床に押し付けられる。自然と体も押し倒されてしまった。わたしに対して強く当たったことのない康が、こんな行動にでたことに驚いてしまっている。 康の、いつからか死んだ魚のような目をしていると呼ばれるようになった目がひどく傷ついているように見えた。 「康、だめだよ」 「姉さん、おれ」 「わたしお姉さんだよ?康の」 「知って、ます」 「だからね、だめなんだよ、こういうのは」 「泣かないで、ください。」 「姉さん…」 「泣いてないよ」という私の声は康の口付けによって消されてしまった。刹那、視界に入った、さっきまで握っていたシャーペンに見られているような気になって耐えられなくなった私は、目を閉じた。 ** ごめんなさい。(スライディング土下座)
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