「あれ、花宮やん」


花宮くんは、げっと声を漏らした。ちょっと、ものすごく嫌そうな顔してるんですけど大丈夫?


「花宮くん、こちらは?」


声をかけてきた黒縁メガネの胡散臭い男の人と花宮くんを見比べていると、メガネの男の人がニヤッと笑ってわたしの肩に触れてきた。


「ほーうかわええなあ。なんなん新しい彼女?あ、セフレ?」

「おいこらてめえ触ってんじゃねーよ」


花宮くんはいつになく低い声で呟き、男の人の質問に硬直している私の肩に触れていたメガネの男の人の手をパシッと払った。


「おー怖い怖い。冗談やんか?それに、敬語忘れてんで?花宮くん」

「すんませんした。じゃ、ちょっと急いでるんで」

「なんやもういくん?」



わたしの手を取って歩き出した花宮くんは、二三歩進んだところで「あ、」と言って男の人の方へ振り返る。



「こいつ、俺の女です。セフレじゃないんで。手、出さないでくださいね」



メガネの男の人に負けないくらいニヤッと笑って言ったかと思うと、すぐに不機嫌な顔になって私を引っ張って歩き出した。


引っ張られながらチラッと後ろを向くと、男の人は真剣な顔でこちらを見ていた。が、私と目が合うとニコ、と笑って「よ ろ しゅ う な」と口パクをしてきた。とりあえず頭を下げて前を向き直る。



「花宮くん、中学の先輩?」

「まあ。そんな感じ。」

「なんだか怪しい人だね」

「…なまえ、」

「ん?」


立ち止まった花宮くんにつられて止まると、花宮くんはじっと私を見てくる。わたしの両肩をガッと掴んで、ぐんと顔を寄せてくる。


「いいか、あの男には近づくなよ」

「え?どうして?」

「どうしてでもだよ!あいつは妖怪だ。とにかく逃げろ」

「う?うん。まあ、会うことなんてそんなにないと思うから大丈夫」

「……はぁ。」

「え、なんでため息よ」

「…危機感持てよな」

「ん?」

「もういい」



再び歩き出した花宮くん。あれ、怒らせちゃった?ぽーっと止まって花宮くんの背中を見ていると、花宮くんはまた立ち止まって「ああもう!」と叫んだと思ったら振り返ってきた。


「はやく来いよ」


と言って、手を差し出してきた。


ふふ、と笑って駆け寄ると花宮くんはわたしの手をとって再び歩き出した。





(ねえねえ、花宮くん)
(あ?)
(セフレいたの?)
(バ、バァカ!!!いねーよ!!!バァカ!!!勘違いすんな!!)
(そ、そんなに怒らなくても…)





**

セフレがいるような軽い男に思われたくない花宮くんでした。

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