「ねえ、康次郎、飽きないの」

「ん、飽きない」

「そろそろきつくなってきたんだけど」


後ろからお腹に回されている筋肉質な腕を解こうとぺちぺちと叩くがびくともしない。

きつく抱きしめられているわけではないので無理矢理にでも解こうとすれば解けるのだけど…無理にできないのが小心者の私なのである。


でもかれこれ30分以上この状態なわけで。


私の肩に顔をおいてすんすんと匂いを嗅いでうなじにキスして…ってずっとその繰り返し。

嫌ではないけどこの格好でずっといるのもきつくなってきている。ちょっといま私のことおばさんっていったの誰だこら。


「じゃあ…寝よう」

「いやいやいやさっき康次郎起きたばっかじゃん」

「眠い」

「猫か」

「…人だが」

「や、知ってるけど」


なんだこいつどんだけ寝るんだよ。だからこんなにデカくなるんだなあうん。っておいおい!


「ちょ、うわ」


ぐんっとお腹に回されてる腕が強くなったと思ったのも束の間、後ろに倒されてしまった。


絨毯の上で二人して倒れこんだ。


「…もー」


眠たくないってば、と康次郎に言おうと体の向きを変えると、目の前に死んだ目。このやろ、寝てないじゃんお目目ぱっちり。


「眠くない」

「眠くなる」

「ばーかばーかばーか」

「ふっ」


誰かさんの真似してばーかと連呼していたら、頭を撫でられた。

頬にかかる髪の毛を耳にかけられて、そっと撫でられている。


「ふぁ、」

「ほら」

「…ずるい」

「おいで」


康次郎が腕を広げて真っ直ぐ見つめてくる。

え?と見ていると、腕枕、と頭のしたに腕を入れられた。

もう片方の腕も腰に回されて、さっきよりも距離が縮まった。


康次郎の顔を覗き込むと、もうすでに目を閉じて夢うつつだ。



「猫だ」



夢の中に猫耳の康次郎が登場した。



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