音羽女子校文化祭



そう書かれた看板がたつ校門をくぐり抜ける。



私の通う音羽は今日文化祭。



まあ、いわゆるお嬢様学校である音羽はあまり文化祭でも派手な模擬店とか、そういうのは出来ない。怪我とかしちゃったら大変。らしい。



私の担当はフリーマーケット。地味だしあまり人は来ない。だから、ゆっくりできる。



そして今日の一番の楽しみは、彼氏である賢二が会いに来てくれる!休憩時間の1時から2時までの間しかないけど、会えるだけでも嬉しい。頑張って仕事して帰りは一緒に遊びに行こう!





ーーササヤンside



野球部のメンバーで音羽女子校の文化祭に来ている。さすがお嬢様学校。なーんか、上品って感じ?



校舎内は何かの賞に選ばれた作品だの何だのと展示されている教室が多い。だんだん、つまらなくなってきたところでフリーマーケットを見つけた。



「いらっしゃいませー」



軽くて通る声で俺たちを迎え入れてくれた女の子。あ、可愛い。



「あ、なまえ。この商品片付けちゃう?」


「ああ、そうだね。」



なまえちゃんねー。ヤナたちは掘り出し物を探すのに夢中だし。ちょっと話、したいな。



「ねえ、これいくらなの?」






ーーーなまえside



賢二、遅いなあ。もう1時20分過ぎちゃったのに…、



「あ、なまえ。この商品片付けちゃう?」


「ああ、そうだね。」



商品を片付けていると声をかけられた




「ねえ、これいくらなの?」


ついさっき片付けようとしていた可愛いブレスレット。男の人なのに、こんなの趣味なのかな。


「これ?えーと、350円です」


「じゃあ、これ頂戴」



うあ、やっぱりそういう趣味なんだ!でも、良かった。売れ残ってて処分するところだったから、助かった。


「あ、ありがとうございます!」


「うん。その代わりさ、休憩時間一瞬に回ろう?」


「え?あー…」



もう、休憩時間始まってるし。賢二来ないし、私だって文化祭見たいし…



「いい、ですよ」


「ほんとに?やった!いつから休憩?」


「もう、休憩始まってるんで。今から大丈夫ですよ」


「え、そうなの?じゃ、いこいこ!」




腕を引っ張られて立たされる。友達に休憩してくることを伝えると、「あれが彼氏?かっこいいねえ!」なんて勘違いされちゃった。違うよ、と言っても聞いてくれないし。まあ、いっか。



「えー!ササヤンずりぃ!!抜け駆けかああ!」



あの男のこササヤンっていうんだ。友達にすごい言われてるけど大丈夫なのかな。笑



「ごめんね、あいつらうるさくてさぁ」


「ううん。大丈夫。ササヤンくん?」


「ササヤンでいいよ。なまえさん、でしょ?」


「何で名前?」


「友達がそう呼んでたからさ!いこ!」



さりげなく手を握られる。ちょっとドキっとしたのは内緒。



ーー


「ササヤン、このクマの可愛「おい。」


いきなり腕を誰かに掴まれた。



「賢二っ…」



「おい、チビ。人の女連れまわしてんじゃねえよ」


「チビ? ていうか、自分の彼女放ったらかしてた人が言えんの?」


「あぁ?」



「ちょ、賢二!やめてよ!」



「なんで、こいつと回ってんだよ。お前は俺と「来なかったじゃん。30分以上遅刻して何言ってんのよ」


「そ、れは…。迷ったからだよ」


「…は?」


「ここ、広いんだよ!」



いきなり叫んだ賢二がおもしろくて笑ってしまった。


「はは。何それー」


「ぶ。もうむり!っははは!」


「てめぇら、笑うんじゃねえよ」


「もう、ササヤン。ごめんね?迷惑かけて」


「いや、いいよ!楽しかったし!じゃあね」


「うん! 」


ササヤンは近くにいた野球部の子達のところへ走って行った。



「賢二、あと10分だけど、どうする?」



振り返ると、賢二にぎゅー。と抱きしめられた。少し苦しくて胸板を叩く。少し離れる腕。顔をあげると意地悪そうな笑顔。



「顔、赤くなってんぞ?」


「な!うっさい!迷子!」


「だ、誰が迷子だ!」




結局好きなんだよ



(ササヤン!あの子は?)
(んー?振られた)
(まじか!ササヤン)
(よし、慰め会してやんよ!)
(お?本当に?)
(行くぞー!)

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