「なまえ。」

「賢二、どーしたの?」

帰ろうとして、廊下に出ると教室の前に賢二がいた。いつになく寂しそうな顔をしている。

「……」
「ん?どう…」

黙ったままの賢二にもう一度 どうしたの? と聞こうとしたらふいに抱きしめられた。

「今だけでいいから、」

どくん。心臓の音が早くなっていく。いつも、あんまり感情を出さない人だから驚いた。何かあったのかな、

「けんじ、」
「…、ごめん。」
「うん。どうしたの?」

腰に回されてる腕が強くなった。

「なまえが、消えるような気がした。」
「え?はは、そんなことかー」
「そんなことってなあ、」
「だって、私が賢二の前から消えるわけないでしょ」

「…!…ま、そうだな」


心臓爆発寸前事件

(やあやあ、ヤマケンくん?)
(て、てめーら!帰れっつったじゃねえか)
(なまえが、消えるような気っ、ぐは!)
(帰るぞ、なまえ)
(あ、うん!)
(おい、ヤマケン!殴ることねえだろうがあああ!)

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