「あ…の、どちら様でしょう…か」


朝起きると、目の前に大男が私の隣で寝ていた。あれ、ここ私の家だよな。夢じゃないよね。頬を抓ってみるが普通に痛い。

そして大男は何故か裸だった。

まさか、と思って焦ったが私はしっかり寝巻きをきていたので過ちはおかしていないだろう。

ベッドから飛び降りて、男の肩を何回か叩いて起こす。男はうっすらと目を開けた。それを確認すると男から距離をとる。そして冒頭に戻る。



男は上半身を起こして欠伸をすると、私を見据えて目を擦りながら小さく呟く。


「……ミケ」

「…は」


ミケ、その名前には聞き覚えがあった。


「それ、私の飼い猫の名前なんだけど…」

「…俺だからな」

「ちょ、ほんとなにいって…あんまり巫山戯てると警察呼びますよっ?」

「…事実だ」

「じゃ、じゃあ証明してくださいよ!」

「…」

「え、ちょ、やっ」


なまえが右手の人差し指を差して証明を乞うと、ミケと名乗る男は、なまえに近づいてなまえの差していた指を掌ごと左手で握るとなまえを抱き寄せる。

そしてなまえの服のしたに手を忍ばせて腰から横腹に手を滑らせる。

「ここにほくろが二つ。」

なまえの耳元で小さく囁くとスッと身体を離した。

なまえは男が離れたことでふっと息をつく。そして言われた言葉を脳内で理解すると、頭に手を当てて「は?」と男をみた。


「…ちょ、なんで…知って…っていうか下隠してよ!!!」


焦って気づかなかったが、この人裸じゃん!と、ベッドの掛け布団を引きずって男にパサッと被せた。


「一緒に風呂に入っていたのだから知っている。」


被せられた掛け布団を頭だけ退かし、下半身に巻きながら答える。


「…嘘でしょ、ほんとにミケなの?」

「……」


ミケはベッドに手を滑らすと何かを掴んで、なまえの前までいくと掌を返して掴んだものを見せた。


「あ、これ…」


男が掴んだのは、なまえがミケにつけさせていた青色のリボンだった。これがこの男の手元にあるということは、もしかしたら本当にミケなのかもしれない。そうなまえは思った。


「ミケはこれを自分から外すことなんてしない…貴方をミケだって信じてもいいの?」

「あぁ。」

「はぁー…でもなんで人になったの?」

「…わからん。」

「そっか…どうしたら猫に戻れるとかは?」

「すまない」

「まあ、わかんないよね。謝らないでよ。…とりあえず、服だよね」


ちょっとまってて、となまえがクローゼットの中を漁る。あったあった、と取り出したのは男物のスウェット。


「これ、幼馴染の。ちょっとミケには小さいけど着ないよりはマシでしょ」

「…あの男か」

「ん?」

「いや、なんでもない。」

「じゃ、着替えてね!私朝ごはん作るから…っと、ミケ。今の状態ってキャットフード食べれるの?」



***



食えんことはない、と言われたが目の前で大男がキャットフードを食すのは見たくないので私と同じご飯を食べてもらった。スウェットはやはり小さいようで腕も足も捲っていた。


「美味しい?」

味噌汁を啜るミケに問う。

「ああ。」

ミケは、頷いて味噌汁の器をテーブルに置いた。

「そっか、よかった。」



不思議な生活の一頁が捲られた





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