「なまえ、帰ろっか〜!」 「わかってるわよ。うるさい」 「もお、なまえちゅん冷たいだだ!痛いから!いたい!」 「じゃあな、なまえ。気をつけろよ」 「うん!またねリゾット」 「リゾットばいばーい」 「…早く行くわよ」 「わかったから耳をはなしてください」 未だ帰ろうとしない生徒を横目に扉を開けて廊下へでる。メローネと帰るなんて、大丈夫かしら。 「なまえって自転車?」 「いや、歩き。」 「じゃあ俺の後ろ乗っていきなよ!」 「あれ、メローネ自転車だったの」 「うん、だから!二人乗りを!」 「いいわよ」 「え!いいの?!」 「ダメなの?」 「いや、全然構わないさ!」 「なら、乗せてきなさいよね」 「(なまえが笑っ、笑ってる!この俺に!しかも二人乗りっっ!)」 「何笑ってんのよ、気持ち悪い」 「あああ、もう可愛いなあ!なまえ!」 「え、え、気持ち悪いっ」 とりあえず抱きついてきたメローネを突き放して前を歩く。 駐輪場では学年を問わずにたくさんの人がいる。あ、そういえばメローネ…。 「メローネ?」 「なまえー!こっち!」 チリンチリン!と自転車のベルが鳴り響く。犯人はもちろんメローネで、私に気づくと手をひらひらと振ってきた。軽く振り替えしてメローネに近づく。 「さ、乗って」 「しつれーしまーす」 男の子とニケツって初めてかもしんない。手はどこ持てば良いんだろう。 「なまえ、腰でいいよ。」 そういって私の手を優しくメローネの腰に持っていく。 ちょっと緊張する。て、なんでメローネに緊張してんの。 「じゃ、動くからねー」 「あいあいさー」 ペダルを踏み込むと同時に動き出す視界。グラッと揺れる車体に驚いてメローネにしがみついてしまう 「は!なまえったら、積極てき!」 「黙れ!」 「っいた!」 メローネの頭をパシン!と平手打ち。そんなことすら悦んでるけど。 風と一緒にメローネのハニー色の髪の毛が靡く。きっと彼のシャンプーの匂いだろう、甘い匂いがする。 それから約5分くらいでストーンバックスに到着。案外普通だった、メローネ。 「何が良い?」 「キャラメルマキアートで」 「了解ー、座っててよ」 「はーい」 メローネが並んでくれている間に窓側の席に座って一息つく。レジに並んでいるのは1人。ここ、美味しいけど出てくるのが遅いんだよなぁ。ぼーっとメローネの後ろ姿を眺めていると、不意に彼が振り返った。 ふ、と笑って右手を挙げるメローネ。なんだ、遠くからみると普通にイケメンじゃあないか。 「ねぇ、じょーちゃん。一人?」 「よかったら一緒にお茶しても良いかな?」 「あ、ご遠慮します」 ああ、面倒だ。なんだこの2人組。私とそれ程歳も変わらないだろう、彼らはしつこく絡んでくる。おい、そこはメローネの席だよ!座るんじゃない。 一人の男が私の肩に触れてくる。ゾワッと悪感が身体中に走る 。やめろ、と言おうとしたとき、 「あー!手が滑った!!」 バシャッと液体が零れる音が響いた。 「うわ!おいこらてめぇ!」 驚いて前を向くと、メローネがバニラフラペチーノをあの2人組にぶっかけていた。手が滑った、なんてきっと嘘だ。お盆には、わざわざ開けたんだろう蓋がご丁寧に置いてある。 「おい、どうしてくれんだよ、この服!」 「よごれちまったじゃあねえか」 「元から汚れてるだろ?その汚れた手でなまえに触れないでよ。」 ね?と笑うメローネ。 眼が笑ってない。 「てめぇぇ!」 「やめろよ、見苦しいぜ」 メローネを殴ろうとした一人の腕が、メローネに素手で受け止められそのまま後ろに回されて動けなくなってしまった。 「メローネ、やめよ。」 「…そうだね、せっかくのデートだ。早くお前らは帰ってくれ」 伏目がちに掴んでいた手を振り払って2人組を追い出すメローネ。 「もう、バニラフラペチーノ勿体無い」 「君の分さえあれば良いよ」 「…メローネて馬鹿なの?」 笑顔のメローネを直視できなくてストローでズズッとキャラメルマキアートを流し込む。熱が集まってしまった身体を冷やすために。 「馬鹿かもね、ふふ」 「笑うな」 「あー、ベネ。可愛いよ」 キモい、と呟くと、はいはい、と流される。そのたまに出る大人な態度もムカつくけど、だけど、さっきはちょっとかっこよかった、なんて。
← / →
|
|