私と同じくらいの子達はみんな「高校」という学校へ行っているらしい。勉強をするところ、と聞くと行きたくないとおもうけど、友達に毎日会える所だ、と聞くとどうしても行きたくなってしまう。そんな私を気遣ってくれたのか、お父様は私と一つ違いの執事を雇ってくれた。 まあ、その執事が大分と失礼な奴だったりするんだけど…年が似ているからか、はたまた私をお嬢様扱いしないからか、私がいちばん素で話せる唯一の人だったりする。 「ねえねえ花宮」 「あ?」 「今日の作法のお勉強サボってもいーい?」 ベッドの上でクッションを抱きながら上目遣いに花宮を見上げると、花宮はこちらに視線をよこすとパッと顔を避けてしまった。耳が赤い。なんで。 「こ、この間もサボりてぇっつって逃げやがっただろうが。」 「だってぇーあの先生好きじゃないんだもの。あ、じゃあ花宮が教えてよ」 「俺はお前の世話係なだけであって教師じゃねえ」 「…世話係ならもっと私のこと気遣いなさいよ」 不貞腐れたように呟やいて花宮を見ると、花宮は私のことをみていつものバカにしたニヤニヤ顔だった。あ、これあのお馴染みの変な笑い方をするな。 「ふはっ」 「なによそれ?お父様に言いつけるよ」 「へぇ?なんて言うんだ?」 「花宮は私に対して敬語も使えないバカな執事です」 「お前にバカといわれるほど堕ちてねぇよ」 「いたっ!」 頭にじんじん痛みを感じる。花宮が私の頭を叩いたのだ。なんだかんだ力加減してくれてるだろうけど、痛いもんは痛いぞこれ。ていうかこんな執事いていいのか。 「一つ上だからって調子乗るな!」 「一年もお嬢様より長く生きているので。申し訳ありませんお嬢様」 「敬語が余計にムカつく。…それに敬語を使う花宮なんて花宮じゃないわね」 「…なに言ってんだバァカ」 「わたしこれでもいちばん仲が良いのは花宮だと思ってるのよ?」 「…俺だって、そう思ってる…なわけねぇだろバァカ!」 「…素直じゃないなーっ!」 「うるせー!とっとと作法の準備しろよ」 「え?だって作法の先生来てないわよ?」 「ここにいんだろーが。」 「は?」 「…っだから!俺が教えてやるって言ってんだよ!理解しろ、バァカ!」 「え?いいのっ?やったー!あ、バカは余計よ。うわ!」 嬉しさでベッドから降りようとしたら、スカートの裾を膝で踏んでしまった。そのままベッドの下におちる!と思ったら、体に暖かさを感じる。浮遊感もないので、そーっと目を開けると見慣れた執事の制服が目の前に広がっていた。 「おい、危ないだろうが」 耳に花宮の吐息を感じるくらいの至近距離で囁かれて、心臓がバクバクといっている。花宮に聞こえそう…!恥ずかしさを隠すために俯きながら謝る。 「ご、ごごごめん」 「ふはっ、顔真っ赤だぜ」 「バ、バカにすんじゃない!」 バッと顔をあげると、花宮の顔がものすごく近いことに気づく。こいつ、顔だけは良いから心臓に悪い…っ 二、三秒見つめあっていると、みるみる花宮の顔が赤くなっていった。いつもは見せない花宮の新しい表情に心が跳ね上がった。 「花宮も真っ赤じゃない」 「う、るせぇ!近いんだよ!」 「…花宮が離してくれないからでしょ」 「…あ、わ、悪りぃ」 「変な花宮…!」 ぎゅ、と抱きしめられていた腕が離れていく。すっ、と温度が離れていくことに少し寂しさを感じながらもゆっくりと足を地面に向けて降ろす。今度は落ちることなくベッドから降りた。地面に足を付けて花宮をみると、未だに耳が赤かった。 (花宮、もしかして私のこと好きなの?) (はっ?!何言ってんだよバカなのか!) (え、違うの?私は好きだよ?) (お、おま!そう言うことを…っ) (あはは!顔赤い!) (お、お前!バ、バカにしてんじゃねぇよ!)
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