少し花宮の捏造設定あり
自分は人に愛されたり優しくされていい人間ではない、と思ってます。



「真くん、ちょっと」

「あ?」


持っていたボールを山崎くんに投げてこちらへ真くんが近づいてくる。

いつもの練習風景のなか、いつもと違う様子の人。真くんがいつも完璧なはずのスティールを外したのだ。更にはゴールも数回外している。先程から真くんを注意深く見ていた私はついに真くんを呼んだ。

呼ばれた真くんは不機嫌満載の顔で私を睨む。汗で髪が顔にへばりついている。まだ試合練習が始まって15分。いつもこんなに汗をかいていなかったはず。


「どうしたの?」

「なんともねーよ。戻んぞ」

「ちょっと、待ちなさいよ」

「だから何でもねぇっ…」


「真くんっ!!」


なんでもねぇ、と私に背を向けた真くんがいきなりフラついて尻餅をついた。周りの選手は驚きで動きが止まっている。持っていたファイルを落としながらも体育館の床に座り込んで頭を押さえる真くんに駆け寄る。


「どうしたの?真くん?」

「っんでもねぇ。」

「ちょっと、熱いじゃない!」


体調が優れていないのか、と真くんの額に手を当てると案の定熱かった。風邪か、それよりも保健室連れていかないと、体育館から保健室まではそう遠くない。私でも大丈夫のはず。


「真くん、つかまって」

「なまえ、俺が運ぼう。」

「あ、古橋くん。ありがとう」


古橋くんにならすぐに運べるだろう、まず選手を練習に戻さないと。そう思ってみんなに目配せをしながら「戻っていいよ。大丈夫。」というと瀬戸くんの掛け声とともに練習が再開された。すると一哉くんから視線を感じる。目は見えていないけれど。


「あー、よかったら花宮んとこいってやってくんない?」

「え?」

「あいつ素直じゃないから。」

にひ、と笑う一哉くん。悪戯っこな笑顔を見ていると真くんの辛そうな表情を思い出して段々と心配になってきた。

「あ、古橋」

一哉くんが指差した方をみると古橋くんが帰ってきていてシューズを履いているところだった。真くんは、と言う前に

「大丈夫だ。38.3だった。寝れば治るだろう」

と告げられた。


「よかった。」

「行かないのか?」

「え?」

「花宮のところ」

「でも、」

「こいつらなら大丈夫だ。花宮がいない時にサボれば後で痛い目に合うからな。」

「そう?じゃあ、行ってくるね」

「いってら〜」


一哉くんは心配してるのかしてないのか分からない。手をひらひらと振って練習に戻っていった。まあきっと一哉くんなりに心配してるんだろうけど、練習中ずっと真くんを見ていたから。そのおかげで私も真くんの様子に気づけた。



「失礼しまーす。」

「マネージャーさんよね。花宮くんなら一応寝かしておいたから。今から保護者に連絡してくるからちょっとみといてもらえるかな?」

「あ、はい。大丈夫です」


パタン、という扉の閉まる音と共に真くんが寝ているであろうベッドへ近づく。起こさないようにカーテンを少し開けると、ベッドの上で顔の赤い真くんが寝ていた。


「…ん」

「あ、ごめん。寝てていいよ」

「…わりぃ」

「なんで」

「色々…」

「部活のことなら心配しないで大丈夫だよ。みんなちゃんとしてるから」

「してなかったらコロス」

「ふふ、真くん」

「あ?」

「…私にくらい言ってくれても良かったんじゃないの、」

「…別に練習くらい熱あってもできるだろ」

「悪化したらどーすんのよ。次からはちゃんと言ってよね。心配かけないで」

「…わーったよ。ちゃんといーます」

「嘘じゃない?」

「ほんとほんと」


辛くて会話するのも億劫になったのか、それとも会話を続けたくなかったのか、真くんは瞼を閉じてしまった。


真くんはいつもそうだ、人に頼ろうとしない。メンバーに頼るのはキャプテンとして情けないとか思ってそうだし言いにくいのはわかるけど、少し寂しい。ただのマネージャーであって私はあなたの彼女ではないけれど、それくらい望んでもいいでしょう?


あなたはいつも嘘を言う


(嘘しか言えない人にはならないで)
(お前の優しさに浸ってしまいそうで怖いんだ)



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