久しぶりの部活がない休日、丁度親がいない俺の家になまえさんを呼んだ。今日も相変わらず可愛い。けれど、ここまでくるのにその他大勢の他人の目にも映ったと考えると嫉妬で苦しくなる。靴を脱いでいる彼女に向き合って、口を開いた。

「なまえさん、これからは迎えに行きます」
「え?そんな、わざわざ」
「いえ、行きます。本当はずっとここにいて欲しいくらいなんです」
「え…あ、わかった…」

そう言うと何故か困ったような顔をするなまえさん。何か、変なことを言っただろうか。玄関から上がると、彼女は「あ、そうだ」と声を漏らした。

「京治くん、よかったら食べない?」

これ、となまえさんが持っていた紙袋に入っていたのはお菓子。手作りかと思ったが、手作りではなかった。

「どうしたんですか?これ」
「お土産で貰ったの。京治くん、好きじゃなかったっけ?」
「誰に貰ったんですか?」
「え、クラスの子だけど…」
「違います名前です」
「…佐藤くん」

嫌な予想が当たってしまった。他の男の名前が出た瞬間、すぐに彼女の手から紙袋をうばってそのまま部屋のゴミ箱に捨てた。いらない、他の男が触ったものなんて。

「これからは受け取らないでください」

俺が捨てたことに驚いて固まっていたなまえさんをじっと見つめると、「ごめんなさい」と呟いた。分かってくれたならいいです、そう言って、玄関前に止まったままの彼女の手首を引いて部屋に招き入れた。

扉の鍵を後ろ手で閉めて、彼女を後ろから抱きしめた。首筋に顔を埋めて首に口付けると、彼女は身じろいだ。腰に回している腕の力を強めると、苦しいよ、と呟いて俺の腕を引き離そうとした。どうして、なんで、君は俺から離れようとするんだ。彼女の腰から腕を離して、彼女の腕を掴んでベッドの方に引っ張っると、小さく悲鳴を上げてベッドに倒れた彼女。ああ、すみません、ちょっと強かったですね。

上半身を起こそうとするなまえさんの肩をやんわりと押して、静止させて手首を掴んでベッドに押しつける。腰に跨って彼女の顔の横に手首を掴んだまま押さえつけて見下ろすと、眉を寄せて困惑した表情になる彼女。

「そういえば、昨日、木兎さんに頭撫でられてましたよね」
「そ、れは」
「ダメじゃないですか。前にも言いましたよね」
「だって、」

「無防備なんですよ、なまえさん。触られたいんですか?」彼女の手首を掴む手に力を込めると、彼女の顔が歪んだ。彼女のどの表情も綺麗だけど、こんな風に歪んだ顔も好きだ。他の奴らは見れない、俺だけの前だけで見せる表情だから。

「違うよ!」

なんで、赤葦くん怖いよ、どうしたの、と泣きそうな声で言い出したなまえさん。どうしたの、なんて、なんでそんなこと聞くんですか。俺は貴女を守りたいだけなのに。ただ、

「ただ愛したかっただけなのに」

この言葉に、彼女は弱いことを知っている。涙を瞳に溜めながら、彼女は受け止めてくれると知っている。彼女は優しいから、俺を強く否定出来ないから。たとえ卑怯だとしても、それくらい彼女が好きなんだから仕方ない。これからもずっと一緒にいる相手なんだから。違いますか?



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