「なまえさん、こんばんは」
「こんばんはー…ってどうしたんですか?」

扉の前に立ちはだかるのはお隣のお部屋である赤葦さん。鍵を差し込もうとすると、鍵穴を塞ぐように赤葦さんが邪魔をする。

「帰ってくるの待ってました」
「へ、何でです?」
「俺、カレー作り過ぎたんです」
「あー、よくありますよね」

だからどうした、そこをどいてくれたまえ。左に、右に、身体を動かして鍵を差し込もうとするが、私に合わせて赤葦さんも動くのでいつまで立っても鍵が開かない。

「なまえさん、よかったらカレー食べませんか?」
「いいんですか?と言いたいところですが、残念なことにカレーは昨日食べたんですよーココイチ。今日は焼きそばの予定なんですー、お心遣いありがとうございますー」

さぁ、どきなさい。そう思ってもう一度鍵を鍵穴に差し込もうと試みる。が、鍵を持った手首を掴まれた。ガシッという音が聞こえそうなほど強く勢い良く掴まれたせいで心臓が跳ねた。

「隣人が困ってるんですよ、助けてください」
「…それって隣人関係あります?…って聞いてます?!」

有無を言わさずにズルズルと隣の部屋の扉の前まで引きずられる。ぐぬぬ、すごい力の差を感じる。

「さ、どうぞ」
「いやいや、悪いですって」

さ、帰りますね。とくるりと方向転換しようとした、ら、とんっと背中を押されて無理やり彼のお家の中へ招きこまれた。綺麗に整頓されているが、然程親しくもない男の人の家に上がり込むのはまずいと思います。

ダメダメダメ、と連呼しながら扉の前に立ちはだかるの赤葦さんを退かそうとしていると、ぐんっと両手首を掴まれた。驚いて目を見開く。幾分か高い赤葦さんの顔を見上げると、そこには笑った(目は笑ってない)顔があった。

「カレー、食べてくれますよね?」
「…はい」

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