「ちょ、なんですか」
「ん?」

ん?じゃないでしょう。こっちは魔法薬学の課題で忙しいのに。というかなんでリドルが私なんかの隣に居るのだろう。親しいわけでもない、特に優れた才能を持っているわけでもないしたまに図書館で見かける程度、それに私はグリフィンドール生だ。スリザリンの優等生が私なんかに構う時間などないはず。

「あの、なんで私のとこに居るんですか?」
「ダメなの?」
「ダメといいますか、なんていいますか…」
「ここは図書館だし何処にいても僕の勝手だろう?」
「まぁ、はぁ、そうですね」

なんだかこの人と会話するのが面倒になってきた。課題をさっさと終わらせてさっさと寝よう。そうしよう。

「ねぇ、それ間違えてるよ」
「……」
「そこも違う」
「……」
「僕のことを無視するの?」
「……」
「…いい度胸だね」

あ、ちょっとやばいかもしれない。一気に鳥肌が立った。スタンディングオベーションだ。ちらり、と隣のリドルを見ると、ひんやりとした笑顔で目を合わせてきた。これはこれは、素敵な笑顔だこと。全身に冷や汗だ。まだ課題は途中だけど逃げた方がいい。

そう思って羊皮紙達を腕に抱え込んで立ち上がろうとした、刹那、リドルに二の腕を掴まれた。すごい力だ!痛い。

「あ、痛い痛い痛い…」
「何処行くの?」
「…寝ます…痛い痛い!!」
「嘘でしょ、まだ終わってない。早く、座りなよ、はやく」

ひぃっと変な声が出そうだ。初夏だから寒いはずなんてないのに今はすごく寒い。震え上がりそうだ。キラキラというよりギラギラしたリドルの笑顔に私の腰は椅子に逆戻りした。

「続き、解きなよ」

リドルの瞳は有無を言わせない。仕方なく課題を進めていく。大人しくしておけばきっと何してこない。彼はきっと単なる暇つぶしなんだ、そう思うことにしよう。

ガリガリとペンを進めていくと、隣にいる彼が不審な動きをし始めた。やたら距離が近いなあ、とは思っていたが、彼の左手が私の右太ももの上に乗ってきたのだ。ちらり、と彼を見ても彼の視線は私の羊皮紙。涼しい顔だ。気にしない方がいいのかもしれない。と、黙っていると、次いで彼の左手が私の右太ももから私の腰に回った。ふわりと香る彼の怪しい香りに、さすがに私は抵抗した。

「あの、なんですか、」
「何が?」
「なんで腰に手を…ひっ」

当ててるのですか、とは言葉が繋がらなかった。彼がさらに距離を縮めてきたのだ。右手も腰に回されて、彼の顎が私の右肩に乗った。彼の吐息が耳元で聞こえてくすぐったい。この距離はおかしい、第一こんなんじゃ課題なんてできない。身を捩って彼の腕から抜け出そうとするが、彼の力は強くなる一方だった。

「僕を無視した罰だよ」

やたら近くで聞こえる彼の少し低めの声に肩が跳ねる。だ、誰か助けて…と周りを見るが何故か図書館なのに人が誰もいない。「人が居たら邪魔だろう?」なんで私の考えていることがわかったの、ていうか貴方のせいなのですね。

彼の右手が腰から離れて私の太ももに移動した。そして撫でられる。どこのセクハラおやじなの。怖い怖い怖い。徐々に彼の右手が太ももを上がってくる、腰にあった左手がスカートにインしていたシャツを引っ張り出した。彼の胸板を押し返しても動かないし恐怖で身体に力が入らない。耳元で聞こえる彼の少し荒い呼吸に私の希望は失われた。
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