「あの、」
「ん?」
「ん?じゃなく…っん」

これ何回目だ。もう感覚なくなるんじゃないかってくらいにエクボとキスを繰り返している。というかされている。
大きな手のひらが後頭部に添えられてもう片方の腕で私の腰をがっちりホールドしているエクボ。ほっぺ以外もほんのり赤く染まったエクボはさっきからずっと私にキスをしてくる。お酒に弱い…わけではないのかな?キス魔?こういうの。居酒屋で飲むのは嫌いな私のために私の部屋で飲もうと言ってくれたエクボにパンチ喰らわせればよかった。二人だから助けを求める人がいないじゃないか。こいつのせいで酔いなんてすっかり覚めた。もっとゆっくりゆったりぐだぐだ飲むつもりだったのに。お酒だけ貰って帰ってもらえばよかったなあ。

私の唇を食すように甘噛みしては熱い舌で愛撫するように舐めて唇を押し付けてくる。私の呼吸に合わせてくれないから余計苦しい。エクボとはもうお酒飲まない。決めた。はじめこそ抵抗していたけどビクともしないしなんせ長時間キスされ続けたせいで脱力してしまった。エクボ以外にキスなんてされたら殴ってる。けどエクボならいいかな、って思ってしまってる私がいる。恋人ってわけじゃないんだけど。

え、じゃあ私たちの関係って?あれ、これってまさかセフレって括りにされるのかな?でも私達そこまでいってない。エクボとキスだって今日が初めて…ってもしかしたらこのまま最後までヤるつもりなのか?エクボのセフレになっちゃうの?

そこまで考えて私は全身から血の気が引いたような感覚になった。私は口の中に侵入しようとしていたエクボの舌に噛み付いた。

「ん、んー!」
「って!は、何だよ」

「セ、セフレは嫌だから!」

「は?!」

「こ、このまま流れでセックスしてセフレにするつもりなのかもしれないけど、私はエクボとそういう関係になりたいなんて思ってない!」
「は、おま、」
「エクボが私のこと身体しか見てないなんて知らなかったし今までのは全部ここに至るまでの演技とかだったら私、私はエクボのこと好きだったのにエクボのこと嫌いにな「おいいい!!おま、勘違いしすぎだ!」

「え?」

「なんでセフレになんだよ!バカ!」
「だ、だって…」
「あー…その、キスしたのは悪かったよ。なんつーか可愛くてつい…」
「え?」
「初めは酔ってて、お前見てたらキスしたくなって、ほんとは途中で酔いは冷めてただけど止まんなくなってた、悪い。言っておくが俺様は、好きでもねえやつにキスするほど馬鹿じゃねえからな…!」
「え…え?」
「だから、お前が好きだ」
「順番…違う、でしょ」
「悪い、なまえのことセフレにするつもりなんてねえから」

「こ、恋人とか、どうだ」さっきまで唇にガッついてきた男とは思えないくらい弱々しい声だった。「お、お願いします」と呟いてエクボの胸板に顔を押し付けた。鼻水ついたかもしんない。



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