「いいか、お前ら。ばれたら練習メニュー二倍だからな」
「に、二倍?!」
「なんだザキ、文句ねえよな?」
「…はい」
「じゃ、まず俺が放課後になまえちゃんを引きとめればいいんだよね?花宮」
「ああ、頼んだぞ原」
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放課後、部活に行こうと帰る準備をしていたら原君に突然呼び止められた。
「あ、なまえちゃーん」
「なーに?原君」
「ちょっと教えてほしいとこあんだよね」
「原君がお勉強…?」
「ちょ、そんな意外そうな顔しないでよ失礼」
「はは、冗談だよ。どこ?」
「この長文なんだけどーー」
珍しく勉強についての質問をする原君に驚きつつ、できるだけ分かりやすく解説をする。時間、大丈夫かな?花宮くん時間に厳しいのに。
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「よし、原が引き止めてくれる間に俺らで部室準備すっぞ」
「クラッカーちゃんと持ってきた」
「おお、古橋さすが」
「……」
「(あ、古橋が花宮に褒められて喜んでる)」
「ケーキとプレゼントもちゃんとあるぜ」
「おい瀬戸寝てんじゃねーよ」
「サプライズ企画したの瀬戸なのにな」
「こいつなまえちゃん来ねえと起きねえな」
「あと飾り付けたら終わりだ」
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「ねえ原君、そろそろ部活いかないと怒られちゃうんじゃない?」
「んー、そうだね。そろそろ行こっか(20分経ってるしさすがに準備終わってるよねー)」
部活が始まってもう10分以上経っている。そろそろ行かないと怒られてしまう、原君も、そうだね、と部活に行く準備を始めた。
部室に向かって歩いていくと、体育館から物音一つしないことに気づいた。いつもなら、ボールのつく音や、応援の声がするはずなのに。
「なんか静かだね…?まだ誰も練習始めてないの?」
「あれー?ほんとだ…(部室からも物音しないんだけどこれ入っていいの?)」
「原君?部室入らないの?」
部室のドアノブを握ったまま動かない原君に声を掛けると、少し悩んで私を部室の扉から離れさせた。
「…なまえちゃんはちょっと離れて待っててくんない?」
「ええ?なんで?どうしたのほんとに」
「まあまあ、いいから待っててねん」
ぐいぐいと肩を押されて部室から離される。どうしたらいいのか分からずにそのままされるがままにされていると、原君はパタパタと部室の扉までちかづいて、そっと扉を開けた。
「みんな?なまえちゃんもう来てー
パァーン!!!
「「「ハッピーバースデー!!!」」」
「……あ」
「……原?」
「あり、間違っちゃった」
「こんの原テメェェ!!なんでお前が始めに入ってくんだよ!!なまえはどうしたんだ?!」
「や、ごめんだっていきなり入ったらマズイかと思って確認を…!!ギャアア首しまる!!閉まってる!!!」
「今回は自業自得だな。手を貸そう、ザキに」
「はぁ…こうなると思ったんだよな。もっとやれザキ」
「ねえみんな?!なんかすごい音がしたんだけど…って、なにしてるの?」
パァーン!!と大きな音が響いてきて、驚いて部室に駆け込むと、原君の首を絞める山崎くんや、原君を抑える古橋に、呆れた顔をして座る花宮くんがいた。
騒いでいるみんなを呆然と見ていると、誰かに肩を叩かれた。顔を上げると、瀬戸くんが人差し指を口に当てて、静かに、と伝えてきた。
「…??」
「こっち」
手を引かれて部室から静かに出る。
「誕生日おめでとう。サプライズは失敗したけど、みんなで、お前を祝いたかったんだよ」
「あ、サプライズだったんだ。だから様子がおかしかったんだね」
「これ、俺からのプレゼント」
「え、いいの?うれしい!開けてもいい?」
「うん」
「わ、可愛い!マグカップだ」
「コップ割ったって言ってたから」
「覚えてたんだ。嬉しいよ!ありがとう」
「…なまえ、」
「え?な、」
なに、と言おうとした唇は瀬戸くんに塞がれてしまった。学校でこんなことしたことないのに、と驚いたまま動けなかった。唇が離れると、ニヤッと笑った瀬戸くんが頭に大きな手を乗せてきた。
「お返し」
「せ、せせせ瀬戸くん!いいいきなり!」
「ごめんごめん。そんなに驚くと思わなくて」
「な、なに笑って…!!」
「おい瀬戸!抜け駆けしてんじゃねー!」
「なまえちゃーんごめんねー!」
「うるさいよザキ」
「ケーキ食べるか?」
「明日メニュー二倍だからな、ザキ」
「えええ?!なんで俺?!」
「花宮、明日ってことは」
「え?!今日オフ?!」
「…ケーキくれ古橋」
「ヤッタアアア」
「あ、原!!それ俺の分のケーキ!!」
「みんなありがとうね」
「気にするな、失敗してしてすまなかったな」
「ううん、嬉しいからいいよ」
「瀬戸が言い出したんだ」
「あ、黙っててって言ったのに」
「うるせー健太郎。ほとんど寝てただろーが」
「花宮がノリノリだったからさ」
「あ?!そそそんなことねーよ!」
「花宮くんノリノリだったんだ」
「違ぇよ!バァカ!」