「しげおくん」と僕を呼ぶなまえちゃんはとても素敵だ。僕なんかの彼女でいいのかな。なんて数え切れないほど思った。それでも離れないのは僕が君のことを好きすぎるからで、最低な僕に縛られてる君はなんて可哀想なんだと思ってしまう。

「なまえちゃん」と私を呼ぶしげおくんは本当に優しい人だ。私なんかにはもったいない。何度も考えたことだけれど離れないのは私が離れたくないからで、我儘な私に自由を奪われている貴方を可哀想だ思ってしまうの。


もうそろそろ君の家だ。帰り道は朝の3倍くらいゆっくり歩いているのに、君といると時が早すぎて困る。できることなら今すぐ僕の手を握るなまえちゃんの手を引っ張って抱きしめたいしその綺麗な唇を塞ぎたいなんて思ってる汚い僕を許して。

「なまえちゃん」「しげおくん」

私の家まで数メートルのところで同じタイミングで名前を呼び合った私達は立ち止まり、なんだか恥ずかしくて笑ってしまった。欲張りな私はもう少しこのままいたいなんて思ってしまう、貴方はどう思ってる?

「じゃ、また明日」「うん、またね」

言葉ではさよならを告げているはずなのに、僕らの手は繋がれたままだった。数秒経ってなまえちゃんは繋がれたままの手を見てクスクスと笑った。

「なまえちゃん、」「なあに?」「…その、キス、してもいい…?」

顔を真っ赤にしてどんどん小さな声になっていくしげおくんに私も顔に熱が集まってくる。「うん、いいよ」と言って一歩しげおくんに近づいて見上げると、いつもより近くで見るしげおくんに心臓がより早くなる。

僕と同じで顔を赤くしてはにかむなまえちゃんに心臓が掴まれたような感覚に陥る。鼓動が早い。もちろんキスなんてこれが初めて。左手をなまえちゃんの肩に置いてゆっくりと唇を近づけるとなまえちゃんの甘い香りでくらくらする。

唇の距離が0になった。たった数秒で離れてしまったが、唇にはまだしげおくんの熱が残っている。恥ずかしさと嬉しさで頬が緩む。しげおくんを見ると顔は赤いが優しい顔をして見ていた。

「じゃあ、また明日。今度は本当に」
「うん、また明日」

ついに離れてしまった手が少し寂しい。なまえちゃんが家に入るまで見守って、帰路につく。なまえちゃんと別れてからの夜は長く感じてしまう。でも、今日はなんだか、幸せな気分だ。


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