部活の練習が終わって着替えながらふと思い出した。

今日はなまえが友達と勉強会の予定を立てていたな。じゃあ部活が終わったら教室へ迎えに行かないと。きっとさみしがっているだろう。

教室にいるだろうなまえの姿を思い出し口端が少し上がった。



「あ、古橋君」

「なにしてるんだ」

「なに、って勉強?かな?」

かな?っと笑ってなまえは隣に座るクラスメイトに問うた。学生にとって友達とする勉強なんてただのお喋り会みたいなものなんだろう。それを分かっていても、楽しそうに談笑していたなまえにたまらなくなって話しかけてしまった。

「俺が教えよう」

「え。あ、ありがとう。でも「いいっていいってなまえ。ごめんね、ただのお喋りになっちゃってた。古橋君に教えてもらいなよ」

「あ、うん、ありがとう」

「じゃあね」

なまえとともに勉強もとい談笑していたクラスメイトは気を使ったのかそそくさと帰って行った。

「なまえ、わからないことがあれば俺にきくといい」

クラスメイトが今まで座っていた席に腰を下ろすと、なまえは開かれてもいない問題集を鞄にしまい出した。

「…そんな、頼ってばっかいられないよ」

「俺以外で誰に頼るんだ?」

「え、そんなの、いっぱいいるよ?」

ちら、とこちらを見て困ったようにつぶやいたなまえ。勉強道具を全てしまった鞄を膝におき持ち手を強く握りしめていた。

「なぜ俺じゃダメなんだ」

「古橋君、最近おかしい、よ?」

そう言うとなまえは立ち上がり一歩下がった。

「おかしい?俺が?」

開かれた距離を埋めるように俺も椅子から立ち上がり、なまえに近づく。

「う、うん」

「おかしいのはなまえもだろう。今日だって俺以外の男に、まかされた仕事を手伝わせてた。」

「それは、向こうが手伝ってあげるって言ってくれたからだよ!ねぇ、ほんとに、どうしたの」

「…なまえが、俺なしで生きれなければいいのに」

そう言って一歩前に出ると、とびくんと身体を震わせ一歩後ずさるなまえになんとも言えない気持ちになった。

「古橋くん…!」

「なまえも、俺がお前無しじゃないと生きれないって知ってるだろう?

「い、みわかんな…!」

「おかしいな。知ってて俺のことをからかっているのかと思っていたんだが」

「そんなの知らない!!」


もう一歩近づくと、意を決したように背を向けて走り出すなまえ。だが手首を掴むことでなまえの逃亡劇は崩された。

「はなして…」

「離さないで、の間違いだろう?なまえ」






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