「花宮くんのことを見捨てれない」 そう言うと、古橋くんはとても小さな声で「そうか、仕方ないな」と呟いた。「ごめんなさい」と言うと「最後に、願いを聞いてくれるか」と手を握られた。 「なに?」 「まだ好きでいさせてくれないか」 「…こんな女やめた方がいいと思うよ」 「そうだな、でも、俺は諦めが悪いんだ」 自虐的に笑う古橋くんを見て心臓が痛くなる。そっと離された手に、少し寂しさを感じてしまう。 「じゃあ、」「ああ、元気でな」 小さくてを振って踵を返す。 家で待ってくれている花宮くんに会いに行かないと。そして、花宮くんにも謝ろう。 見慣れた扉を開けると、飛び出すように出てきた花宮くんに抱きしめられた。「なまえ」「花宮くん、ごめんね」「ダメだ、別れねぇぞ」 「古橋くんにさよならしてきたよ」 「そうか」と強く抱きしめられる。「別れなくていいの?」胸が苦しい。「バカ、俺が嫌いになるまでは絶対に誰にも渡さねえ」あなたに酷いことをしたのに、それでも私を求めてくれるこの人をもう裏切らないと約束しよう。 「ありがとう」と言う声は涙の味がするキスに呑み込まれた。
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