いつも通り花宮の部屋で二人で駄弁っていても、チラチラと携帯を気にするなまえにイライラが止まらない、と花宮は無意識に握り拳を作った手に力を加えていた。皮膚に爪が深く食い込んで痛みが走ったところでハッとして手をはなした。ため息が出そうになるのをぐっと堪える。 「あ、どうかした?」 花宮の雰囲気に気づいたなまえが、携帯を置いて隣で一緒にテレビを見る花宮に問うた。テレビに映る今売れっ子の漫才師たちを指差して「ん?…いや、こいつら、このネタばっかだよな」なんて言って笑った花宮。それを見てなまえは少し驚いたような顔をした後「え、あ、そうだね」と笑った。 なんで作り笑いをするんだ。まるで、なまえの中から俺が消えていくみたいだ。と花宮は思うが、口にすることはできない。 ソファに置き去りの手に意識してしまう、今までは普通に握って指を絡めることなど容易かったのに、なぜ戸惑っているのだろう、と花宮は考える。怖い、か。触れることを拒絶されるのが怖いのだ、と心の中で呟いても隣の愛しい人には届かない。臆病になったと自虐的になってしまう。 光りだしたなまえの携帯。 携帯に手を伸ばすその前に、なまえの手を握った花宮。驚いたなまえが花宮を見ると、今迄に見たことがないほどに悲しく笑ったイトシイ人がいた。 唇を重ねても身体を重ねても、繋がれない、と花宮は思った。俺の奥に見ている奴がいるんだろう、と。 それでもいいと思った。花宮にはなまえが必要不可欠な存在になってしまっていた、誰にも渡さない、その思いだけが強くなっていく。首元、胸元、至る所に跡をつけて、ずっと腕の中に閉じ込めておきたい。 眠るなまえの額に口付けた。
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