久しぶりに高校時代の友人に会うんだ、なまえもどうだ?と花宮に誘われてやってきたなまえ。初めてみる古橋は、まるで心を見透かす力があるんじゃないかと思うほどに瞳が真っ直ぐで、印象的だった。 お酒を飲みながら三人で談笑している最中に、ちらちらと目が合う古橋に心臓が跳ねたように感じる、その気持ちを隠すようにお酒を普段の二倍くらいのスピードで消費していた。 「おいお前酔ってんの?」 「酔ってません!」 「顔赤いぞ、もうやめておけ」 「古橋の言うとおりだ」 「ん〜!大丈夫って、うわ…」 なまえの腕が机の端においてあったグラスに当たり、ガシャーンッとグラスが床とぶつかって粉々に砕けた。 「おま、バカ!あーったく。ちょっと店員呼んでくるわ」 「わかった」 「う〜」 おい、大丈夫か。古橋が机に伏せたなまえの肩を揺すると、うう〜、と唸ったなまえが「気持ち悪い…」と呟いた。「おい、ここで吐くなよ。トイレ行くぞ」となまえの腕を首に回して、引きずるようにトイレまで引っ張る。中に誰もいないことを確認すると、個室に入ってなまえの背中を摩る。 「大丈夫か。」古橋は優しく問いかけてはいるが内心気が気ではなかった。 暑い暑いと言ってボタンを外していたブラウスからはブラは見えているし、しゃがみこんでいるせいでスカートは捲れ上がっていてショーツも見え隠れしていて非常に心臓に悪い。そして、なにより花宮の彼女だ。古橋は、してはいけないことをしているような気持ちになる。 「水を持ってこよう」 「うんー」 この場から離れるべく立ち上がろうとした、ついでに花宮にバトンタッチしようと。だが古橋のその行動はなまえによって防がれた。古橋の服の裾を掴んで離さないのだ。 「おい、花宮を連れてくるから離せ」 うん、あはは、ふるはしくん。とへらへら笑って古橋を離そうとしないなまえ。古橋はため息を一つ吐いて、なまえと向き合うようにしゃがみ込む。 居酒屋の小さなトイレに大の大人が二人。距離は自然と近くなるもので、顔の距離は15cmほど。言うなればすぐにキスができる距離。古橋は、チラチラと頭を過る如何わしい気持ちに蓋をしようと「離してくれ」と少し強めに言った。が、なまえは古橋の言葉を聞いているようで聞いていない。「古橋くん、」なんて潤んだ瞳に赤い顔して肌蹴たなまえに言われた古橋は如何わしい気持ちに蓋をすることはできなかった。 * 「おせぇ」 とうに割れたガラス達は片付けられている。ほろ酔いの気分もさめてしまった花宮は、未だ戻ってこない二人に苛立ちを覚えていた。画面に映し出されるのは刻一刻と進む時間で、それが余計腹を立たせる。ざわつく心を掻き消すように酒を一気飲みしても、悶々とした燻りは消えなかった。
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