「おはよう原くん。あ、古橋くんも」窓際でフーセンガムを膨らませながらケータイを弄っている原くんと、足を組んで本を読んでいる古橋くんに挨拶をすると二人とも視線を移してくれた。といっても原くんの目は相変わらず見えない。 「はよーなまえ」 「…なまえ、ちょっと来て」 「え、ええ?」いきなり本をパタンと閉じた古橋くんに腕を引っ張られて躓きながらも着いて行くと、人気のないところへ連れてこられてしまった。 「なに?どうしたの?」 「スカートが些か短いようだが?」 「え」 「だからスカート。あとカッターのボタン、二つ目を開けるな。屈むときに見えるだろう?」 腕を組んでわたしを見下ろしていた古橋くんは、細長い指で私のカッターシャツのボタンを留めてくる。 「そ、そんなことのためにこんなところまで来たの?」 「そんなこと?」 「(やばい地雷踏んだ)」 「なまえは、分かってないな」 古橋くんの手のひらがわたしの頬に添えられるように触れた。彼氏に、しかも美形な人にこんなことされたら女の子なら誰しもがドキドキするだろう。私も現在進行形で心拍数が跳ね上がっています。 「あ、あの…!!」 むにっ キスでもしてくれるのかな、と甘い想像をしていたらいきなり両頬を抓られた。 「ひはいお!(いたいよ!)」 「もう少し女としての意識を持ってくれ。(心配で仕方ない)」 やっと離してくれた頬を自分の手のひらで優しく摩る。女としての意識なんて男の子にわかるの?なんてことは言っても無駄なので素直に「すみません。これから気をつけます」と言っておいた。 「分かってくれたならいい。」 ふ、と笑って私の頭に手を乗せて頭を撫でてくれる。 「(わ、笑顔だ)」 「そろそろ行くか」 「うん!」 「あ、スカート伸ばして」 「ええーこれ長い方だよ?」 「………」 「ちょ、さすがにスカートは自分で直すよ!セクハラめ!」 「…(セクハラ、だと)」 「あ、ごめん言いすぎた。(表情で読み取れるようになってきたわたし凄い)」
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