目が覚めると、足には足枷。腕には手錠がつけられていた。 なんで、こんなことに とにかく、逃げなきゃ、でも、どうやって? ガチャ、と部屋の扉が開かれる。中に入ってきた人物を見て私は目を見開いた。 「あれ、起きた?」 「え、せ、瀬戸、くん」 「うん、瀬戸くんだけど。」 「なんで、これ、外してよ」 ジャラジャラと響く手錠と足枷を外してくれと瀬戸くんを見ると、訳がわからないとでも言うように「なんで?」と聞いてくる。 「なんで、って。冗談にしては酷いよ!ここからだして!」 近づいてくる瀬戸くんに恐怖で潰されてしまいそう。 涙が滲む目で睨んで思い切り叫ぶ。 私の目の前に来た瀬戸くんは、私と視線を合わせるようにしゃがんだ。 そして私の頬に冷たい手を滑らせて、流れる涙を親指で拭う。 そのまま手を下に移動させると、私の涙で濡れた指で私の唇に触れる。 そして、冷たい声で言い放つ、 「家から出たい? 出る必要なんてないでしょ?」 放たれた言葉に呆然としていると、突然口付けられてしまった。 「んん…!」 瀬戸くんの舌がわたしの唇を舐めて口を開くのを促してくる。 「ん…っ ああっ」 必死に中に入ろうとする舌を拒絶しようと閉ざしていると、瀬戸くんの手が服の中に入ってきた。 驚きで口が開いたところに瀬戸くんの舌が入ってきて口内を侵す。歯列をなぞって私の舌を捕まえようと迫ってくる。 瀬戸くんの身体を退かしたくても手錠が邪魔で自由に動けない私を良いことに、冷たい手が身体を這い回る。その感覚にゾワゾワして嫌でも反応してしまう。 「…はぁ…」 「…っん…」 唇が離されると、お互いの唇を繋ぐ銀の糸が引く。プツンと切れる糸を上がった息を整えながら見ていると、頭に瀬戸くんの手が置かれ、優しく撫でられる。 じゃあまた来るから、待っててね。 なんて言って部屋から出て行こうとする瀬戸くん。 こんなの、やだ、いやだ! 「ねえ!出してよ!!瀬戸くん!!なんでっなんでっ!…私なの…」 出て行く瀬戸くんを引き留めるように必死に叫ぶと、瀬戸くんはドアノブに手をかけて此方に振り向く。 そして、ふっと笑った。 「なまえのことが好きだからだよ」 パタン。 扉が閉じられる音と共に、私の瞳から涙がこぼれ落ちた。
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