「あれ、私のケータイどこにやったっけ」 「あー、コレ」 「え、なんで弘が持ってんの」 「見られたらだめなことでもあんの」 「別に無いけ「あんだろ」は?」 「大量に男のメアド入れやがって。あとLINEもな」 「登録するくらいいいでしょ?はやく返して」 「…ほんとお前バカだな」 「え?」 「お前は俺のだけ持っときゃいいんだよ。」 「意味わかんない」 「まあもう消したからいいけど」 「まってなに消した」 「アドレス全消去したから」 「バカは弘でしょ?!何してくれてんの!返してってば」 平然とした顔の弘が持ち上げているケータイを奪おうとするけど身長差のせいで届かない。 「なあ」 声色が一気に冷たくなった弘に周りの空気ぐ一瞬にして冷たくなった。弘が怖くなって目を逸らすと、目を合わせろとでも言うように顎を支えられた。 「なまえは俺だけでいいだろ?」 「…っ」 反論しようとしたけどできなかった。言う前に唇を塞がれてしまったから。 いつも優しい弘のキスじゃなくて私を探るような力強いキスで怖くなって涙が滲んできてしまう。 涙が頬を伝って私の肩をつかんでいた弘の手の甲に落ちると同時に弘からのキスが止んだ。 「…っはぁ…う…」 嗚咽を繰り返す私の頬に触れて涙を親指で拭う弘はさっきの弘と違って戸惑ってしまう。 「…ごめん。でも俺だけのものでいてほしいんだ。俺だけを必要としてくれ…っ」 肩を掴んでいた力が強くなってギリギリと骨が悲鳴を上げる。痛みに顔を歪ませながら弘の腕に触れた。 「ひ、ろし…大丈夫だから!弘だけだから…!」 「なら、いい」 ため息交じりに呟いた弘は私のことを力なく抱きしめて、私の肩に顔をうずめて泣いていた。
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