「あ、なまえちゃん!このプリント、記入して提出してくれってさ」 授業が終わって部活に行く準備をしてたら、なまえ、というワードが耳に入ってきた。声のする方を見るとクラスの…誰あれ、えっとーAくんでいっか。Aくんがなまえと話してた。おい、汚らわしい目で見てんじゃねーよ。 未だに談笑しているあいつらにイライラしてきてなまえに近づくとAくんは俺に気づいて怯えた瞳で逃げてった。あっけないねー。ちょっと睨んだだけなのに。 Aくんが逃げたのを不思議に思って振り向くなまえ。あーその瞳がホシイ。いや、全部ホシイ。 「あれ、原くん?どうしたの?」 「んー?やー、何の話してたのかなーって」 「あ、ああ、あのね、このプリントを提出してって」 「先生って?」 「え?あ、担任だと思うけど」 「担任ってあのおっさんだよな?あいつんとこ行くとか許さないよ」 「や、でも提出だし…」 「だーかーらー誰かに代わりに持ってって貰えばいーじゃん」 はぁ、とため息をつく。周りの奴らは関わりたくない、とでも言うように足早に帰って行く。いちいち見てんじゃねーよ。なまえが穢れる、 「もう、原くん、冗談だよね」 「なに、冗談って。俺本気なんだけど」 「え、ていうか、原くんには関係ないよね…?」 「なんで?」 「なんでって、その、彼氏でもないんだし…」 「何言ってんの。俺は彼氏なんて枠じゃないし。なまえって俺のだし?」 「ほ、ほんと何言ってるのかわかんない!わたし、もう行くね。」 そそくさと鞄を持って教室から出ようとするなまえの腕を掴むと、なまえの身体がビクッと跳ねた。ほっせー腕。すぐに折れちゃいそう。 なに、と問いかけてくるなまえはちょっと泣きそうになってて本当に可愛い。ああ可愛い。そんななまえに追い打ちをかけるように呟く。 「他の男と話すんなら、その口縫っちゃおっかな……あ、でもそうすると俺も話せないのか。うーん……」 なまえの瞳には恐怖がちらついている。涙も徐々に滲んできている。あーあ、泣いちゃう 「原、くん、なんでっ」 「なんでって…なまえのことが好きだからじゃん?」 「わ、たしは!好きじゃ、ない、よっ」 ズキン。 嗚咽混じりに呟いて、涙目で俺のことを睨むなまえは本当に可愛くて滑稽。 「へえ、関係ないけど」 掴んでいた腕の力を強めると、骨がギチギチときしむ音が聞こえてくる。 「い、たいよ!!」 掴んでいる腕を押し返そうと必死ななまえは気づかない。 「俺もね、痛いんだよ」 否、見えていないのか。 前髪で隠れる俺の目に滲むコレのこと。 (好きじゃない、なんて。) (俺のものだけで居てほしいだけなのに) (ね、なんで?)
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