「あの、ほんと、すみませんでした」


おはようございます。お酒のせいでガンガンする頭を床に押し付けて謝ってます。

なぜかというと。

目が覚めたら知らない部屋の知らないベッドの上でした。


そして記憶が、ない。


そしてそして誰に謝っているかというと、


青山くん。


「いや、大丈夫だよ。逆にごめんね、鍵とかわかんなくて。会社から近いし、ここでもいいかなって。あ!変なことしてないからね!安心して」

「そそそそそんな、謝らないでいいよ!うわあほんとごめん。」


そうです。酔っ払った私は青山くんに介抱されていたのです。この部屋は青山くんのお家。起こしても起きないとかどんだけ寝てたの私の馬鹿!


「他の人は?どんな感じだった?」

「みんな二次会に行ったかな。あ、美波ちゃんは同期の女の子が、美波ちゃんと同じマンションらしくて一緒に連れて帰ってたよ。それと、古橋くん」

「え、」

「ん?」

「あ、ごめん。古橋くんがなに?」

「ああ、なんか心配そうにしてたけど、僕が家に送るって言ったら帰って行ったよ。まあ、送り届けれなかったんだけどね」


はは、と苦笑いする青山くんに罪悪感で潰れそうになってしまう。

深く深く土下座をしてもう一度謝る。


「ほんとーにごめんなさい!」

「いやいや、ほんとに大丈夫だから。あ、朝ごはんでも食べる?まだもうちょい時間あるから。それと、お風呂使ってもいいよ」

「何から何まで…!ありがとう!助かります!」



お風呂に浸かりながらがんばって記憶を起こす。

えっと、あ、康次郎くんに膝枕されてたんだ。うわあ、なんか恥ずかしくなってきた。


ていうか、青山くんが古橋くんって言ったときにすごい反応しちゃった。変に思われてなさそうだからいいけど。

はぁ、なんかもう会社休みたい。




そんなことを思っていても休めないのが現実である。
(お風呂から上がると、しっかり用意されている美味しそうな朝ごはんが広がっていてびっくりしました。青山くんの女子力見習いたいです。)


そのまま二人で会社に出勤。


「ねえ、なにあれ、どういう関係?」


なんて声が聞こえてはっとする。


あ、そっか。なんで気づかなかったんだろう!


一緒に帰って一緒に出勤なんて、寝泊まりしましたって公表してるようなもんじゃん!


「あ、青山くん。別々で来るべきだったね」

「そういう風に見られるの嫌?」

「え、や、青山くんが嫌とかじゃなくて」

「僕は、どちらかというと嬉しいよ」

「は?」


いまなんて、と言おうとしたときにはもう営業部の前で、青山くんは元気に「おはようございまーす」と言って入って行ってしまった。


なにあれ、冗談だよね


「おはようございます」


青山くんに遅れを取りながらも営業部に入る。おはよう、という声を聞きながらデスクに着く。


「おはよ、名前ちゃん」

「おはよう、美波ちゃん。康次郎くんも」

「ああ、おはよう」

「ねーねー、朝一緒に通勤したって本当??」

「え、」

「うん。そうだけど」

「ちょ、青山くん?」


なんでそんな堂々と言っちゃうのこの人!


「え、やっぱりそうなんだ!何人かが噂してたからさー。青山くん?手出してないでしょーね?」


美波ちゃんが真剣な顔でボールペンでピシッと青山くんを指すと、青山くんは、はは、と笑って


「大丈夫、何もしてないよ。ね?名前ちゃん」

「あ、う、うん。」

「ならいいけど。まあ青山くんは紳士だし大丈夫そうね」


コピーしてきまーす、と美波ちゃんが席を立つ。やだな、入社早々嫌な噂が流れなかったらいいけど。


ふぅ、と小さくため息を吐いて、いまだに痛む頭のこめかみをぐいぐいと押す。これで治るかどうかは知らないけれど。


すると、視線を感じた。


ぱ、と見ると康次郎くんがこちらを見ていた。あの見透かすような瞳。

なんだかいたたまれなくなってすぐに視線を外した。

別に疚しいことなんかないのに、なんでこんなに、動揺しているんだろう。



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