「営業アシスタントに所属します苗字名前です。よろしくお願いします」
パチパチと響く拍手に一安心する。ただいま新入社員の挨拶真っ最中です。
「営業担当になりました。古橋康次郎です。よろしくお願いします」
低音が心地いい古橋くんの挨拶を、ぽーっと見ながら拍手をしていると目があったような気がした。
「ねえねえ」隣に立っていた新入社員の女の子が肩を叩いてきた。そして、耳打ち。「さっきの人、なかなかかっこいいよね」
おお、さすが古橋くん。早速ですか。
同じように耳打ちで返答する。
「そうかな、よくわかんないや」「ええー。そっかー。あ、わたし美波。七瀬美波。よろしく。名前ちゃん」「ふふ、よろしくね」こそこそと耳打ちで会話をする私たちはなんだか子供っぽくてお互いに笑ってしまった。
「七瀬美波です。営業アシスタントを務めます。よろしくお願いします」
七瀬ちゃんの挨拶で営業部の挨拶を終えた。
「部長の田中です。よろしく。新入社員歓迎会は明日にでもしようか!」
ガハハ、と大きな声で笑う部長は気さくな方で優しそう。営業部には新入社員は10人程。新入社員歓迎会か、なんだか本当に社会人なんだと思い知らされる。不安よりも期待の方が大きいのが救いか。
「それぞれの名前が書いてある資料が置いてあるからそのデスクを使ってください。それでは一旦挨拶を終わります」ぱちぱちと拍手を打って一息つくと「名前ちゃん!」と声をかけられる。声のする方を見ると、美波ちゃんが手招きをしていた。
「隣のデスクだよ!よろしくね」
「わ、よかった!こちらこそよろしく」いえーい、と小さくハイタッチすると上から声が掛けられた。
「楽しそうなところ失礼。同じく隣の青山です。よろしく」
「はい!よろしくお願いします」
両サイドのデスクが明るい人で良かった。そういや、古橋くんは…
「そんなにキョロキョロしてどうしたんだ、苗字。」
「え、あ!古橋くん!って、真ん前なんだね。近すぎて気づかなかったよ」
「そうみたいだな。よろしく」
「よろしくね」
「周りが楽しそうな人でよかった。ね、名前ちゃん」
「うん、そうだね!」
不安は多少残るけど、
なんだかんだやっていけそうな気がしていた。
この時は、なんて。