もやもやした微睡みの中で響く声は、聴いたことある声で、誰かと思い出そうとする前に、しっかりとした思考が目を覚ました。


「あ、もう20時」

ソファに綺麗に畳まれたスウェットがあるということは、康次郎くんはもう帰ったのだろう。

お礼も言わずに帰してしまった。
明日、出勤した時に言わないと。

目線をテーブルに向けると、ラップがかかったお粥が置いてあった。きっと康次郎くんだ。食べ物を見ると自然とお腹が空いてきた。すっかり風邪は治ってきているみたい。

レンジで温めて「いただきます」と手を合わせてお粥を食べる。美味しい。

こんなにお世話になってしまって申し訳ない反面、一人暮らしという不安もあった中こんな風に心配してくれる人がいるありがたさに目元があつくなった。

携帯を見ると美波ちゃんや青山くんからのメールで、少し口端が上がってしまう。心配ないよ、と返信して食べ終わったお粥を片付ける。

早くお風呂入って寝よう。
今度はしっかり髪を乾かして。





「古橋、新体操部に好きな人いるらしいよ」
「え、なにそれ噂?」
「なーんか男子がそんな話してたの」
「古橋って恋愛できるんだ」
「あんたそれは酷いわ」

きゃっきゃしてる女子達の会話が耳に入ってくる。古橋くん、てバスケ部のあの人だよね?この前ボール拾ってあげたんだった。へえ、新体操部に。誰だろう?癒し系のマキちゃん?お姉さんタイプのユリちゃんかな?

新体操部は可愛い子多いからなあ

ぼーっと考えてると「名前!いつまで着替えてんの」と部長に声をかけられた。「あ、ごめんなさい今すぐ!」「まったくもう」なんて呆れたように笑われる。へへ、と笑い返すと「笑うな」と怒られた。

体育館に行くと既にバスケ部の面々が練習していた。古橋くんと目があったような気がするけどきっと気のせい。

「またぼーっとしてるよ」
「あ、すみません」
「なに?バスケ部に好きな人でもいるの?」
「え、ちがいますよ!」
「花宮は名前にはレベル高いんじゃない〜?あ、それとも瀬戸とか?」
「だから、ちがいますってば!ニヤニヤしないでくださいよ!」
「はいは〜い」

もう、と呆れると「ごめんごめん」と笑われた。準備体操をしながら、ちらっとバスケ部を覗き見ると古橋くんがシュートの練習中で、ボールがゴールにスパッと吸い込まれたように入っていった。すごい、小さく口から漏れた言葉は周りの部員達は気づいてないみたい、だった、けど、何故か古橋くんと目があった。ような気がする。





「…んん」

昔の思い出の夢を見た。そういえばこんなことも、あった気がする。

「ていうか何時」

ベッドサイドの目覚まし時計を手にとって見ると、針は6:10を指していた。

いつもより早いけど、昨日たくさん寝たから仕方ないか。身体の調子も随分良くなった。ゆっくり準備して出勤しよう。


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